10月11日に豊洲の新市場が開業することで、周辺エリアがさらなる発展に向けた起爆剤になる──と期待する向きが多い。ならば、湾岸エリアにあるマンションの資産価値も上昇するのだろうか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が予測する。
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豊洲の新市場開業により、江東区湾岸エリアにあるマンションの資産価値に好ましい影響をもたらすのではと考える人はいるだろう。だが、私はまったくそうは思わない。
そもそも、今や世界的な存在となった築地市場は、魚介類の取引を行うところである。それがここまで観光地化したのは、場内と場外に美味しいお寿司屋さんがあったからに他ならない。もとをただせば、ただの魚介類の取引所なのである。
今回、その魚介類の取引所が豊洲へと移転する。新しい市場は、現在の築地とは違って恐ろしく不便な場所にある。今の築地市場のように、銀座まで来たから「ちょっと寄るか」という気分で行けるところではない。
そして、当初の目玉だった千客万来施設も東京五輪の後に着工される予定だという。であれば、そこは単に魚介類の取引所である。そういう場所に、今の築地市場と同じ集客力があるとは思えない。
したがって、注目が集まるのは移転した当座だけになるのではないか。いくらおいしいお寿司屋さんがあっても、電車や新交通システムを乗り継いでまで食べに行こうという人は、今の数分の一に減るだろう。
そうでなくても、2年前の大騒ぎはまだ人々の記憶に新しい。振り返ってみれば、小池百合子都知事が自己アピールのためだけに騒ぎを大きくしていたに過ぎなかった。そのことに気付いた都民は、ドッチラケ状態になった。だから今や話題にも上らない。
しかし「毒に塗れている」というイメージだけは引きずっている。あの騒ぎが、周辺のマンション市場に何か影響を与えたかというと可視的なものは何もなかった。もちろん、中古マンションの価格が下がった、というような現象も一切見られなかった。
ただ、「豊洲」という街のイメージには好ましくはない影響を残した。あの騒動以前は「住みたい街ランキング」で、端っこの方に出ていた豊洲は、今ではほとんど見られなくなった。