長寿命時代を生きるために、いつまでも活動的に動けることはとても大切だが、年を重ねれば体は衰え、膝や腰などあちこちが痛んだりもする。骨が弱くなると骨折も心配だ。それでも、元気に動ける体を維持するために、また加齢による慢性的な痛みを改善するためにも、必要なことはズバリ、運動習慣だという。
高齢者の運動器疾患に詳しい伊奈病院・整形外科部長の石橋英明さんに“動ける体”の鍛え方を聞いた。
「歩行や運動のために働く骨や関節、筋肉などを強く丈夫に保つために必要なのは“運動”です。しかし年を重ねると、痛みやしびれなどが出やすくなり、整形外科にも多くの高齢のかたが訪れます」と言う石橋さん。
痛みがあると、原因を悪化させるのではないかと恐れ、運動からは遠ざかる。高齢者ならいっそう不安も大きい。即、受診すべきだろうか。
「年齢を問わず、人の体は負担がかかると組織が傷み、それに伴って痛みや違和感が出ますが、同時に体の中では組織の修復もされています。たとえば重い荷物を持ったり、長時間歩いたりして痛みが出ても、数日後には患部が修復され、自然に痛みが引くことも多い。この場合なら慌てて受診するより、修復がスムーズに進むよう安静にしていることが賢明です」
しかし高齢になると修復に時間がかかり、また加齢変化による関節の変形などで慢性的な痛みもあり、見極めが難しいこともあるという。
「基本的には、急激に発症した強い痛みで動けないほどなら即、受診を。骨折している可能性もあります。歩けない場合は救急車を呼んでもOKです。また、痛みと併わせて発熱(37.5度以上)がある場合も受診してください。痛みがあっても動ける場合は3日~1週間、安静にして様子を見てください。痛みをおして運動や家事作業を続けると慢性化します。痛みが治まらなければ受診を」
◆予防にも慢性の痛みの改善にも運動が効果的
「骨や関節、筋肉などは加齢によって誰でも衰えます。でも、なりゆき任せにすることはありません。骨や筋肉は何才からでも鍛えて強化することができるのです」
石橋さんがすすめるのは、3種類の『ロコモーショントレーニング』。「いすを使って簡単に行うスクワット」「転倒予防に効果がある片足立ち」「ふくらはぎの筋肉を強化するかかと上げ」の3つだ。運動習慣のない高齢者でも簡単に始められ、効果とともに安全性も高いのだという。