今年、国立がん研究センターは初めて、がんの3年生存率を公表。膵臓がんの15.1%は、突出して低い。有効な治療や、早期発見の方法がないとされて、公的ながん検診の対象になっていない。だが、一つの可能性が拓けてきた。
膵臓は、胃の裏側に位置する長さ約20センチの細長い臓器だ。早期発見が難しい理由を都立駒込病院・消化器内科部長の菊山正隆医師に聞いた。
「膵臓がんが発生するのは、膵臓の中を通る“膵管”の粘膜です。太さは0.5ミリから1ミリしかありません。現段階では、内視鏡で胃がんや大腸がんを早期発見するような方法がとれないのです」
それゆえ、早期発見を諦める医師が多いのが現実だ。しかし、菊山医師たちのグループが状況を打破しようとしている。
膵管の粘膜内にがんが留まっている段階を“0期”と呼ぶ。超早期と言える“0期”で摘出手術を行って、完治したケースも出てきた。それを可能にしたのが、エコー、MRI、そして最も重要なのが、超音波内視鏡だ。
「先端に超音波装置がついている特殊な内視鏡です。これを使用すれば、患者の負担を少なくしながら“0期”の膵臓がんを発見できる機会が得られます」
超音波内視鏡は口から入れて、検査時間は約15分間。問題は、超音波内視鏡がまだ広く普及していないこと、操作には極めて高いスキルが必要なことだ。