“演歌界のプリンス”として、2000年のデビュー以来、第一線を進んできた歌手・氷川きよし(41歳)。現在、明治座で行われている『氷川きよし特別公演』には連日、多くのファンが詰めかけている。この劇場公演を取材したコラムニストのペリー荻野さんが、氷川が活躍を続ける秘密に迫る。
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ステージに姿を見せただけで、満員の客席から「キャーッ」と悲鳴のような大歓声があがり、右に動けば右側の観客が、左に動けば左側の観客が大拍手。首をかしげてちらっと流し目ビームを送った途端、目線の先の客席から、ため息のようなどよめきが聞こえる。歌に合わせて客席を埋めたペンライトがキラキラと揺れ動き、合いの手、掛け声もみんなの息がぴったり…。先日、明治座の『氷川きよし特別公演』でひしひしと感じたのは、「これぞスターの王道」という氷川きよしのパワーだった。
公演は第1部が芝居『母をたずねて珍道中 お役者恋之介旅日記』。旅一座の人気者恋之助(氷川)が、実は笛の名門の息子で、江戸にいる母を訪ねて旅をするというお話。氷川は旅役者の役だけに、花鳥風月柄の華やかな衣装にアイラインもばっちりの花形メイク。恋之介は、みんなに「若様」と呼ばれ、困ったときは、拳をこめかみ辺りに当てて、「えへっ」っとやる…って、こりゃもう江戸時代というより、昭和のアイドルみたいなんですけど!?
公演のあとの囲み取材の際、ベテランの記者の中から「セリフが長くなって…」と感慨深げな声が出た。それはずっと氷川公演を見続けている私も感じたことだった。これまで氷川は舞台公演で「森の石松」「銭形平次」「め組の辰五郎」「ねずみ小僧」など、時代劇の有名人を演じてきたが、その演技は余裕たっぷりとはなかなかいかず、セリフも短め。その分、決めセリフが決まると「よくやった!!」と観客は大喜びしていたのだが、今回は長いセリフもすんなりこなし、山村紅葉、ベンガルらとのやりとりでも笑わせる。かなりアドリブもあるらしい。
本人は「座長と呼ばれるのは苦手」らしいが、「(座長としては)まだまだだと思う氷川も頑張っている、自分も頑張ろうとお客さんの励みになれれば」と語っていた。セリフだけでなく、舞や立ち回りもある1時間40分の芝居を一気にやり切る姿を見られるのは、劇場公演だけである。