官僚たちが世間を賑わす事件が相次いでいる。高度経済成長の立役者と言われた官僚機構はなぜ崩壊したのか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が語り合った。
片山:森友問題をきっかけに噴出した官僚のスキャンダルの原因を2014年に設置された内閣人事局に求める向きがあります。内閣人事局が作られて官邸が官僚の人事権を握った。その結果、官邸に対し、官僚が忖度しはじめて不祥事が増えたという話です。佐藤さんはどうお考えですか?
佐藤:人事の問題ではあるのですが、押さえるべきは内閣人事局ではなく、2009年と2012年の政権交代です。1度目の政権交代で自民に軸足を置いていた官僚は、民主党政権で粛清された。残った官僚も、民主から自民への再度の政権交代で要職を解かれた。
片山:まるでスターリンが粛清した後のソビエトのような話ですね。
佐藤:構図は同じですよ。結果として生き残ったのは二通りの官僚です。
一つが義理を欠き、人情を欠き、平気で恥もかく、ごますり型の“サンカク官僚”。もう一つが、省エネ型官僚。典型がセクハラ事務次官の福田淳一。彼らは絶対に政治家や上司とケンカしない。実現したい理想も定見もない。強いていえば、目標は出世。だから強い政治家や上司の言うことを聞き、弱い政治家は無視する。この手の省エネ型の官僚は局長止まりだったのですが、政権交代でチャンスが回ってきた。