ライフ

柳家小三治が語る繰り返し朗読し、涙を流した本

柳家小三治は2014年に人間国宝に 撮影:藤岡雅樹

 多趣味であることでも知られる噺家の柳家小三治が、繰り返し朗読し、涙を流した本について語った。

 * * *
 中学時代、親父の物置の中に表紙のない本があり、立ち読みを始めたら時間が経つのも忘れたことがありました。吉川英治の『宮本武蔵』です。そのうち大佛次郎の『鞍馬天狗』を読むと、映画と違って物静かな男に描かれている。以来、宮本武蔵と鞍馬天狗が生涯の先生になりました。何があっても自分の道を究めていく宮本武蔵が生き方の手本になり、鞍馬天狗が持つ品格に憧れたんです。

 大人になって大分経ってから大佛次郎の史伝を読みます。『ドレフュス事件』(フランス第三共和政時代のスパイ事件を描いた作品)、『パリ燃ゆ』(パリ・コミューンを描いた作品)、そして『天皇の世紀』【1】(明治天皇の誕生から戊辰戦争までを描いた作品)。『天皇の世紀』は60歳近くなってからですが、これほど私の人生に大きな影響を与えた本はなかったなあ。読んでいる最中から「歴史って凄いな」と思わされましたよ。

 第1巻の最初の数十ページは事件らしい事件は何も起こらず、京都御所の様子や朝起きてからの天皇の日常生活が事細かく書かれている。退屈極まりない。でも、肝臓が焼けただれるような我慢をしてそこを読むと、天皇には何の実権もなく、武家が天皇の名を借りて勝手なことをやってきたんだなと、歴史の背景を理解できます。だからこそ、そのあとの黒船来航から始まる展開が面白く読めました。もうひとつ、この本で重要なことを知りました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
1970~1990年代にかけてワイドショーで活躍した東海林さんは、御年90歳
《主人じゃなかったら“リポーターの東海林のり子”はいなかった》7年前に看取った夫「定年後に患ったアルコール依存症の闘病生活」子どものお弁当作りや家事を支えてくれて
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン
中川翔子インスタグラム@shoko55mmtsより。4月に行われた「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート2025」には10周年を皆勤賞で参加し、ラプンツェルの『自由への扉』など歌った。
【速報・中川翔子が独立&妊娠発表】 “レベル40”のバースデーライブ直前で発表となった理由
NEWSポストセブン
奈良公園で盗撮したのではないかと問題視されている写真(左)と、盗撮トラブルで“写真撮影禁止”を決断したある有名神社(左・SNSより、右・公式SNSより)
《観光地で相次ぐ“盗撮”問題》奈良・シカの次は大阪・今宮戎神社 “福娘盗撮トラブル”に苦渋の「敷地内で人物の撮影一切禁止」を決断 神社側は「ご奉仕行為の妨げとなる」
NEWSポストセブン
“凡ちゃん”こと大木凡人(ぼんど)さんにインタビュー
「仕事から帰ると家が空っぽに…」大木凡人さんが明かした13歳年下妻との“熟年離婚、部屋に残されていた1通の“手紙”
NEWSポストセブン
太田基裕に恋人が発覚(左:SNSより)
人気2.5次元俳優・太田基裕(38)が元国民的アイドルと“真剣同棲愛”「2人は絶妙な距離を空けて歩いていました」《プロアイドルならではの隠密デート》
NEWSポストセブン
『ザ・ノンフィクション』に出演し話題となった古着店オーナー・あいりさん
《“美女すぎる”でバズった下北沢の女子大生社長(20)》「お金、好きです」上京1年目で両親から借金して起業『ザ・ノンフィクション』に出演して「印象悪いよ」と言われたワケ
NEWSポストセブン