ビジネス

パラレルキャリアで猫本屋を開業した49歳会社員の「目標」

安村正也さんと『Cat’s Meow Books』の猫店員たち

 会社員をしながら、本屋『Cat’s Meow Books』(東京・三軒茶屋)を開いた安村正也さん。「Meow(ミャウ)」とは日本語で言う「ニャー」で、つまり猫の声。ここは猫をテーマにした様々な本が並び、猫が店員として常駐し、そして生ビールを飲んでくつろげる、異色の本屋だ。本屋開業までの道のりを追った『夢の猫本屋ができるまで』(井上理津子著、安村正也協力、ホーム社)が出版され話題を呼んでいる。

 安村さんが本屋を始めるきっかけは、50歳が見えてきた頃から「もやもや」するようになったことだという。人生100年時代、一つの仕事、一つの会社だけで、人生を満足に終える人は減っていくだろう。未経験から本屋を始めた安村さんに、この出版不況の時代に本屋を開いた理想と現実、そして、パラレルキャリアを成功させるヒントについて伺った。

 * * *

■本屋で儲けようと思っていません──素人・パラレルキャリアだからできること

──安村さんは49歳で、「会社員」と「本屋店主」というパラレルキャリアを始められました。「副業」ではなく「パラレルキャリア」という言葉を使われているわけですが、元はP・F・ドラッカーが紹介した言葉で、「もうひとつの世界を持つこと」。ただし、よく似た概念の「副業」と違うのは、必ずしも「報酬を得ることを目的にしていない」点です。

安村:パラレルキャリアは、両方の仕事が経済的・精神的な意味を含めて互いに補完しあっていて、主従の関係がないんです。昨年『Cat’s Meow Books』をオープンしましたが、僕は平日は会社員として働き、土日に店舗に立っています。イベントがあるときは、平日の夜にイベントもします。この会社員と本屋の、どちらが主で、どちらが従という気持ちはないんですね。極端に言えば、僕の場合は本屋で儲けようとは思っておらず、精神的な満足を得たい、承認欲求を満たされたいという思いでやっています。収支に関しては、会社員と本屋業を合せて、回っていればいいわけですから。

 もちろん、本屋の売り上げの一部を保護猫(※)団体に寄付していますから、売り上げを増やしていきたいとは思っています。が、それ以上に、本屋を続けることが目標です。

 でも、こういう話をすると、プロの書店員さんや業界に詳しい方から、甘いと忠告をいただいたり、青臭いとか、痛々しいとさえ言われる(笑)。今思えば、何も知らない素人のパラレルキャリアだからこそ、できたことかもしれません。

──素人だからできることって、たぶん、どの業界にもありますよね。ただ、出版業界は長年厳しい状況にあるので、厳しい忠告もわかりますが。

安村:僕の考えでは、食べていける本屋を作ろうとするから、今の世の中、しんどいんじゃないかと思うんですね。反対に言えば、その点を後回しにしているからこそ、僕のような素人でも、本屋を開き、今のところ続いている。そもそもお客さんにとってみれば、本屋が儲かっているか、いないかは、あまり関係ないですよね。たとえ小さくても街に本屋があったほうがいいし、その一端を僕が担えれば、という気持ちでやっています。

関連キーワード

関連記事

トピックス

広末涼子(時事通信フォト)
【自称・広末涼子容疑者が逮捕】「とってもとっても大スキよ…」台湾フェスで歌声披露して喝采浴びたばかりなのに… 看護師女性に蹴り、傷害容疑
NEWSポストセブン
北極域研究船の命名・進水式に出席した愛子さま(時事通信フォト)
「本番前のリハーサルで斧を手にして“重いですね”」愛子さまご公務の入念な下準備と器用な手さばき
NEWSポストセブン
麻布台ヒルズの個展には大勢の人が詰めかけている
世界的現代美術家・松山智一氏が問いかける“社会通念上の価値の正体” 『うまい棒 げんだいびじゅつ味』で表現したかったこと
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
工藤遥加(左)の初優勝を支えた父・公康氏(時事通信フォト)
女子ゴルフ・工藤遥加、15年目の初優勝を支えた父子鷹 「勝ち方を教えてほしい」と父・工藤公康に頭を下げて、指導を受けたことも
週刊ポスト
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン
中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
Tarou「中学校行かない宣言」に関する親の思いとは(本人Xより)
《小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」》両親が明かす“子育ての方針”「配信やゲームで得られる失敗経験が重要」稼いだお金は「個人会社で運営」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン