主に月末の土曜深夜に放送される生放送のトーク番組『今夜も生でさだまさし』(NHK総合)。9月の最終土曜日、本番前にスタッフと談笑するさだにカメラを向けると、「あっ、ちょっと待って! 今、“さだまさし”になってくるから」と、すぐさま、おなじみの眼鏡をかけて再登場。
芸能人がオフに眼鏡で変装することはよくあるが、彼にとってはこの眼鏡が、“さだまさし”への変身グッズというわけだ。デビュー45周年を迎えた大ベテランだが、当の本人は褒められるといまだに恥ずかしいと語る。
「本音を言うと、ぼくは情けなくてダメなやつなんだよ。自分にしかわからないさもしさやダメさ加減があって、そこを乗り越えたくて、歯を食いしばってカッコつけて、“さだまさし”として普段の自分では言えないことを歌っているの。だから褒めてもらうと恥ずかしいし、申し訳ない。みんながイメージしてくれる“さだまさし”にならなきゃいけないなって、思いますよね」
先ほどまでスタッフとふざけ合っていた姿とは打って変わって、照れくさそうな笑顔を見せるさだが手に取ったのは、親交の深い面々がさだについて語り尽くした書籍『うらさだ』(小学館)。世代を超えて愛されるさだらしく、幅広い著名人がさだを“解説”している。
旅番組でも共演した笑福亭鶴瓶(66)は、「まっさんのすごいところは、感動を届けようとする」と、さだの歌と人柄を称えている。
「最近は、さだまさしを面白いと言ってくれる若いミュージシャンも増えた。でも、まだまだぼくの“音楽”は無名。この本をきっかけに、ちゃんと音楽を聴いてもらえたらいいな」
ぼくの音楽は無名──“さだ節”でそう嘆くが、『精霊流し』や『関白宣言』などヒット曲はあまりに多い。
「さだまさしをここまで育ててくださったのはお客様ですから。みなさんがつらい時に歌で応援するためにヒット曲を作って有名にしてもらったと思うので、そのお礼のつもりであちこちの被災地で歌わせてもらっています。
実際には泥かきをしてくれる手がありがたいだろうけど、“もうちょっと頑張らなきゃ”という時の応援歌として役に立ちたい」
この日も、日中に陸前高田(岩手)で東日本大震災の慰霊の奉納演奏を行った後だった。
「お盆から、休みの日はほぼ被災地へ行っていて体も神経もへばりつつある。でも、笑顔や歓声をもらうと力が湧くし、純粋に行きたい、行かなきゃって思います。さすがに今日の移動中は読書しながら寝落ちしちゃったけどね(笑い)」
『生さだ』の放送が終わったのは午前2時。タフな笑顔で、さだはスタジオの外にも大勢集まったファンへ向かって力いっぱい手を振った。
◇『うらさだ』(さだまさしとゆかいな仲間たち/著、小学館)
寺岡呼人を案内人とし、笑福亭鶴瓶や立川談春、泉谷しげるなど、さだの生き方や考え方に共感した仲間たちがその魅力を大いに語る。
※女性セブン2018年10月25日号