「睡眠薬を入れたウイスキーをコーラで割ったものを出したら、みんな自分から飲んでいました。こちらの『飲ませよう』という気持ちが強ければ『変なことをされるかも』と相手は警戒する。だから自分から飲みたくなるような雰囲気をつくったんです。例えば、私がひとりで黙って飲み始めたり、お酒の話をして警戒を解いたり…。相手が酒を飲んで意識がもうろうとしたところで、殺害しました」
そう語る白石隆浩被告(28才)の口調は異様なほど熱っぽかった。
神奈川県座間市のアパートの一室で9人を次々と殺害した容疑で、白石が逮捕されてから10月31日でちょうど1年が経つ。
「今日はすべて話します。何でも聞いてください」
東京・立川拘置所の面会室、アクリル板越しに座る小柄で華奢な男が白石だ。髪は耳下まで伸び、口ひげ、顎ひげは生やしたまま。顔色は妙に白い。上下黒の服装で、にじり寄るように前のめりに話す。
「これまでの人生の中で、いちばん頑張ったことっていうと、事件かな。今回の事件が、いちばんの挑戦でした」
はっきりとした口調で、微笑みながら話す姿に反省の色はまったく見えない──。
2017年10月、自宅の一角にあったクーラーボックスなどの中から9人の遺体が発見された事件で白石は逮捕された。被害者たちと知り合ったのはSNSサイト。「死にたい」と投稿していた若い女性たちに「一緒に死ぬ」などと書き込み、自室へ誘い込んだ。睡眠薬や酒を飲ませた後、首を絞めて気絶させて強姦し、ワンルームのロフトから下げたロープで首を吊って殺害。その後、遺体をバラバラに切断し、遺棄した。
白石は昨年8月下旬~10月下旬のたった2か月の間に9人を殺害したうえ、解体したとされる。
今年9月10日、東京地検立川支部は、白石を殺人よりも重い、女性8人への強盗・強制性交殺人罪に罪名を切り替えて起訴(男性1人については強盗殺人で起訴)した。
白石は「本当に死にたいという人は1人もいなかった」「金を返したくなくて殺した」など動機を供述してきたが、あまりに凄惨な犯行にそれが本当の動機なのか訝しむ声もあがる。白石は何を考えていたのか。
◆母親はきれいで料理がうまくて非の打ち所がない人
まっすぐにこちらを見つめ、白石は事件について早口で話し始めた。
「相模原の事件の犯人とは違って、犯行の理由は、ただただ『欲』に突き動かされて、です。具体的には、金銭欲と性欲を満たすため。殺したのは、殺人や死体損壊の願望があったわけではないです。強引な性交をしてから女性を生きたまま帰すと、一度逮捕された身だからすぐにしょっぴかれる。証拠隠滅のために殺しました。
特によく思い出すのは、最初に殺害した1人目と“好みのタイプ”だった9人目。1人目は金銭を奪う目的で殺害しましたが、そのときに初めて、強引な性交によって自分の性欲が満たされることがわかった。それから、自分の欲望にスイッチが入って、次々と被害者となりそうな女性をツイッターで探し、犯行を繰り返すようになりましたね」