「東京箱根間往復大学駅伝競争」、いわゆる箱根駅伝は、テレビやラジオ中継を通じていまや日本中が注目するスポーツイベントだ。その出場権がかかった予選会が行われ、シード校とあわせた全出場チームが決まった。しからない指導で知られる原晋監督のもと、2015年から優勝を続けている青山学院大学は連覇の記録を伸ばすのか、阻止するとしたら、どのライバルなのか。陸上競技を長く取材する、ライターの小野哲史氏が分析する。
* * *
10月13日に箱根駅伝の予選会が行われ、上位11校が本戦の出場権を獲得した。全23チームで争われる来年1月2、3日の本戦では、王者・青山学院大が連覇記録を歴代2位タイとなる「5」に伸ばすのか、ライバル校がそれを阻止するのか。
予選会突破校の中で注目したいのは、他校を寄せつけずに圧勝し、堂々のトップ通過を果たした駒澤大だ。箱根では2002~2005年の4連覇を含め、6度も頂点に立ち、黄金時代を築いた。しかし、2008年を最後に近年は優勝から遠ざかり、前々回は9位。前回はまさかの12位に沈み、9年ぶりにシード権を失っていた。
前回までの20kmからハーフマラソン(21.0975km)に距離が延長された予選会で、駒澤大はエースの片西景(4年)が1時間1分50秒の好タイム。他のメンバーも力走し、全員が1時間4分以内でゴールした。総合タイムで実質的な大会新記録をたたき出し、「平成の常勝軍団」は名門復活を印象づけた。
名将・大八木弘明監督も「久しぶりの予選会で少し緊張したけれど、選手たちが自分たちの力以上のものを出してくれた」と、ご満悦の様子だった。
予選会当日の気象条件に恵まれたという点を差し引いても、今季の駒澤大の強さには“本物感”が漂う。出雲、全日本、箱根とこなす例年なら、出雲後に全日本仕様、そして箱根仕様へと、長い距離を走るためにシフトチェンジしながらトレーニングを段階的に切り替えていく。だが、今年度の駒澤大は出雲に出られず、予選会に回ることになったため、例年より早く20kmを走れる土台ができ上がった。もちろん、本戦に向けては細やかな調整が欠かせないが、青学大をはじめとしたシード校にはないアドバンテージを得たという見方もできるだろう。
◆東洋大監督「青学大の連覇を阻止しないと」
箱根本戦に出場する全チームを見渡すなら、絶対王者・青学大の対抗馬として東洋大を一番手に挙げたい。
東洋大のここ10シーズンをひも解くと、出雲駅伝(出雲全日本大学選抜駅伝競走)と全日本大学駅伝(秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会)を制したのはそれぞれ1回ずつにもかかわらず、箱根となると2009年の初制覇など優勝4回。2位は5回、3位も1回と、ほぼ毎回のように優勝争いに絡み、100%の確率で表彰台に上っている。箱根での安定感は抜群だ。1、2年生が7人も起用されるフレッシュな顔ぶれで臨んだ前回も、青学大に競り勝って往路を制し、復路で逆転を許したものの、総合2位に食い込んだ。
酒井俊幸監督は「箱根は青学大の連覇を阻止しないといけない」と語り、今季は例年以上に打倒・青学大に燃えている。チームを進化させるために、夏に6年ぶりとなるアメリカ合宿を行ったのも、並々ならぬ決意の表れだろう。