警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、今まさにメディアを騒がしている積水ハウスの地面師事件についてのインサイダー情報。
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東京・西五反田の旅館跡地の取引を巡り、「積水ハウス」が約55億円をだまし取られるという地面師事件が起きた。そこで地面師の手口をよく知る某暴力団幹部に、事件について話を聞いた。
開口一番、彼の口から出てきたのは、捜査を逃れてフィリピンに出国したカミンスカス容疑者の名前だ。面識があるという。
「小山ってやつはさ、今はカミンスカスだっけ?」
カミンスカス操容疑者の旧姓は小山だ。
「逃亡する数時間前まで錦糸町で飲んでますよ。店の名前もわかっているが、相当慌ててたんじゃないの。店に行ったら、その時のやつの様子を全部話してくれると思います」
飲んでいたというカミンスカス容疑者が、急いで出国したのはなぜか?
「12日の金曜日、警察が入ったんですよ。ある偽造屋の所にね」
カミンスカス容疑者が出国したのは翌13日の土曜日。偽造屋とは、16日に別の詐欺事件で逮捕された三木勝博容疑者だ。
「他の偽造事件で、三木の所に金曜日、捜査が入ってね。やつが任意で引っ張られた。それを知った小山は、これはヤバイと思ったんでしょう。そこで積水のを作らせてたんでね。捜査されれば自分も引っ張られる。騙された、なんて嘘は一切通用しなくなる」
強制捜査の手が及ぶ前にカミンスカス容疑者が出国したのは、別の偽造事件の捜査が直前にあったからだという。
「2度と日本に帰ってきませんよ、やつは」
羽田空港で、追跡取材する記者からマイクを向けられたカミンスカス容疑者は、「自分も騙された」と飄々とうそぶいていた。だが内心は、一刻も早く出国したかったに違いない。
偽造屋の話が出たところで、文書偽造についても聞いてみた。
「偽造も、餅は餅屋なんですよ。印鑑証明でもパスポートでも、それぞれ専門に作成する人間がいる。あいつは何屋さんてね。印鑑証明とか、偽造するのが面倒で難しくなるほど細分化されている」
それぞれの文書によって偽造専門の人間がいるらしい。
「土地の売買による所有権移転は、基本的に司法書士が行うから、身分証明書などもコピーで大丈夫な場合が多い。だが役場でもらう印鑑証明なんかは、きちんとしたものを作る必要がある」
今回使われたようなパスポートはどうなのだろう?
「偽造するだけなら、それほど難しくないね」
幹部は軽い調子で話し始めた。
「パスポートの偽造はやらないが、運転免許証はやっていたよ。パスポートも免許証も偽造するための作業は似たようなものだ。今回のように出入国するため、運転するためではなく、身分証明に使うだけなら、ICチップとか確かなものでなくてもいいわけで。社会保険証の偽造なんて簡単ですよ。大企業ほどね」
では、登記簿は?
「登記簿はなかなか偽造できないので、これこそ専門のやつらがいる。だが以前は、ちゃんとした法務局の書類を偽造したやつのことを『地面師』といったんです」
そう語る幹部は真顔になった。彼らの業界では、「地面師」に対して業界なりの定義が存在するらしい。