肉体改造の「RIZAP」のように、お笑いにもメソッドを見出し、面白い話ができるテクニックを伝授しようと試みる『笑イザップ』(大阪チャンネル)が誕生した。トレーナーをつとめる小籔千豊による厳しい指導によって、無名の若手芸人たちは、劇的な変化を遂げるのか? そのメソッドは、視聴者も実践できる内容なのか? イラストレーターでコラムニストのヨシムラヒロム氏が、笑いで結果にコミットできるかを見届けた。
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印象的なCMと「結果にコミットする」のキャッチコピーで認知度を飛躍的に向上させたマンツーマントレーニング「RIZAP」。近年は、短期集中トレーニングの方法論を生かし「RIZAP English」、「RIZAP COOK」といった新しい分野に食指を伸ばしている。English、COOK共に取材をしたことがある。「こうやれば、こうなる」といったメソッドが確立しており、そりゃ出来るようになるわ!と思ったもの。そんな「RIZAP」は、常に新たな分野に挑戦している。
関西で人気のテレビ番組が月額480円で見放題のアプリ「大阪チャンネル」。主に提供される番組は在阪民放局のバラエティ番組だが、アプリでしか見られないコンテンツも用意されている。そのひとつが『笑イザップ』だ。
笑いが取れない若手芸人を独自の短期集中プログラムで1ヶ月間トレーニングし、面白い芸人になれるかを検証するドキュメンタリー。ナビゲーターは村田秀亮(とろサーモン)、トレーナーを小籔千豊が務める。2人が「RIZAP」のトレーナー風の衣装を着て映るアイコンを見た際、「面白いパロディだなぁ」と思った。その後、コラム執筆のために『笑イザップ』とググって驚く。この番組、パロディではなくれっきとした公式コラボ。「RIZAP」グループのウェブサイトにも“RIZAP全面協力のもと、たった1ヶ月で「人は面白くなれるのか」の番組化が実現しました。”と記載。つまり、「RIZAP」の挑戦する新たな分野とは”お笑い”である。
漫才、コント、大喜利と多種多様な技能が求められる芸人。全てを1ヶ月でマスターするのは不可能。よって今回は、トレーナーである小籔千豊が得意とするエピソードトークの技術力の向上を目指す。番組中、芸人にとってエピソードトークとは基礎中の基礎だとも語られる。ただ、”お笑い”とは享受する側の感性によって左右されるもの。僕が一切笑ったことがない芸人にも多くのファンがいるし、またその逆もある。
人によって笑いのツボは違う!なんてことでは意味がない。視聴者として求めているのは、「こう話せば、面白くなる」というメソッド。芸人ほどは使いこなせなくとも、それを得ることに価値はある。『笑イザップ』を視聴するあたり、こんな効能があれば嬉しい。
全3話からなる『笑イザップ』。第1話では、NSC(吉本総合芸能学院)を卒業したばかりの若手芸人から被験者を選ぶオーディションの模様が配信された。5人からなるグループ面接、各自が1分間の鉄板トークを披露し、それを小籔が審査。その際、小藪が最初に放った言葉が印象的だった。
「僕らが笑わなくても動じないでください。あなた方の話で笑う確率は99%ない。僕、オモロい友達がむちゃくちゃいるんですよ。同期も先輩も後輩もNSCを勝ち抜いてきたエリートばっか。その人達の話を聞いてもやや笑いですから、君らの話を聞いても笑うわけがない!」
『笑イザップ』のオーディションに登場するのは、NSCを卒業して1~2年目の超若手。オーディションで披露されるエピソードトークのレベルは高くない。審査を見ていて、テレビで日常的に目にする芸人がいかに洗練されているかが分かる。
第1話の最後、3名の合格者が発表された。それと同時に発表されたのが小籔による合格者のエピソードトークのチャート。コヤブメソッドによれば、エピソードトークとはオチの強さ、途中のオカズ(話の中盤に盛り込む小笑い)、聞きやすさ、興味を引く題材かどうか、オリジナル性と5項目に分けられるという。その5項目を5段階で評価し、数値が高いほど面白いということ。そして、3人の合格者は次回までにネタを見つけてこい!と課題を出された。