台湾の彰化県政府は同県二水郷の約100年の歴史を持つ古刹、碧雲禅寺の強制撤去に乗り出した。「寺は中国共産党政権と密接な関係がある組織から資金援助を受けている」などがその理由だ。寺は2012年から中国国旗「五星紅旗」を毎朝、掲揚しており、地域住民との間でトラブルが絶えなかった。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じた。
碧雲禅寺は土地の所有権などをめぐって、地元の建設業者の魏明仁氏が裁判所に訴えたところ、競売にかけられた。結果、魏氏が競り落としたが、その直後に魏氏は寺の尼僧4人を追い出し、毎朝五星紅旗を掲げるようになった。
魏氏は寺の名前を碧雲禅寺から「中華人民共和国愛国教育拠点」と変えて、仏壇や仏具を焼き払い、毛沢民や周恩来の肖像画や中国共産党の宣伝ポスターを飾ったほか、毎朝、毎晩、中国国歌「義勇軍行進曲」を大音響で流していた。
魏氏は同紙の取材に応じて、「中国国旗の掲揚は『祖国統一』を実現させる決意の表れだ」などと話している。
地元住民は「長年親しんできた寺が中国共産党擁護の拠点になるのはおかしい。騒動の裏に中国当局が暗躍している」などとして、デモや集会などの抗議行動を行っている。
これに対して、彰化県の魏明谷県長は「魏明仁氏が不法に碧雲禅寺を占拠し、寺院を政治に利用している」などと批判するとともに、9月下旬から碧雲禅寺への水道水の供給を中止。さらに、寺院内の「非歴史建築物」を違法建築物として撤去することを地元警察に命じるとともに、500万台湾ドル(約1842万円)の工事費用を魏氏に請求するとしている。