その“訃報”は、新聞の片隅で報じられていた。
〈秋田県仙北市の脚本家、高階航(本名、高階茂嘉)さん(76)方から身元不明の遺体が見つかっていたことが11日、秋田県警関係者への取材で分かった。高階さんは1人暮らしとみられ、連絡が取れていない〉(産経新聞10月11日付大阪夕刊)
高階氏は高校卒業後に永六輔に弟子入りし、ドラマ『太陽にほえろ!』、『桃太郎侍』やアニメ『ルパン三世』などの大ヒット作を手掛けた脚本家だ。
高階氏は30年ほど前に離婚、子供たちとも離れ、母親の介護のために1989年に故郷の秋田に戻ったという。“Uターン後”の高階氏と付き合いが深かった秋田在住の友人男性が話す。
「高階先生が話すのは東京で仕事していた時のことばかり。石原裕次郎とメシを食ったこととか、俺らには縁のないスターたちとの思い出だったよ。一昨年、先生が入院したときに『何かあったときにはどこに連絡したらいいんですか』と聞いたらAさんという人を挙げたけど、調べたらもう亡くなっていた。でも先生は他の連絡先を教えてくれなくてね。思えば自分や家族のことは話さない人だった」
秋田に戻ったばかりの頃はよく自転車で外出し、周囲と挨拶を交わしていた高階氏だったが、いつしか知人たちと距離を置くようになっていたという。