3人寄れば文殊の知恵ならぬお墓の話──。女性セブンが20~70代の読者570人(女性508人、男性62人)に実施したアンケートでは、実に56%の人がお墓について悩んでいた。お墓についての情報は充分ではなく、先祖代々のお墓を更地に戻す「墓じまい」や、遺骨を新しいお墓に引っ越す「改葬」の方法や費用がわからず悶々としている人が多いことも浮かび上がった。
そうした声に応えるべくスタートした女性セブンの連載「お墓、どうしますか?」「お墓、どこにしますか?」に加筆修正を加えた単行本『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』が刊行になったのを記念し、著者の井上理津子さんと、お墓を題材にした小説『一緒にお墓に入ろう』を著した作家・江上剛さんが対談を行った。昨今急増している納骨堂の評価からお墓の意味まで、避けては通れない人生後半生の大問題についてたっぷりと話し合った。
◆仲間で集まると、みんな病気かお墓の話ばっかり
江上:偶然とはいえ、井上さんとは同じこの10月にお墓を巡るフィクションとノンフィクションを出すという“同志”の関係になりました。フィクションのぼくはお墓を巡る内輪の騒動を描き、ノンフィクションの井上さんは現代人のお墓選びの多様性をつぶさにルポされている。
井上:“同志”とは光栄です。でも江上さんはどういったお気持ちから、正妻と愛人との間で右往左往する男のシチュエーション・コメディーを書こうと思われたんですか?
江上:ぼくは今64才で、大学の同級生など仲間で集まると、みんな病気か墓の話ばっかりなんですよ(笑い)。
井上:ああ、小説にもそんな話をする同窓会のシーンがありましたね。
──主人公の大谷俊哉は63才、大手銀行の常務。現頭取に付き従って出世した。久しぶりに仲間の飲み会に顔を出すと、1人が妻と離婚し、〈「一緒にお墓に入ってもいいのよ」〉と言ってくれた若い女性と暮らしていると言い出す。俊哉は動揺する。10年以上の愛人・麗子が自分に言った言葉と同じだったからだ。やがて話題は口々に、〈墓探し〉をしているとか、〈納骨堂ってのがあるらしい〉とか、地方は〈面倒を見る人がいなくなって、墓まで過疎になっているんだから〉といったお墓話に花が咲く…。
江上:東京のブラックホール化というのがあって、お金から人材までみんな東京に集中しちゃってるでしょう。みんな時々田舎に帰って、誰も住んでいない実家に風を通したり、墓掃除をしたりはしてるんだけど、いつか体力的に通えなくなる日が来る。そうすると先祖の墓が無縁墓になってしまう。それで、どうしようかなと途方に暮れているんですね。