従来の紙巻きたばこのように火で燃やさないために煙が出ず、一服後の呼気(蒸気)に含まれる有害成分も紙巻きたばこと比べて大幅に削減したとうたわれる「加熱式たばこ」──。受動喫煙防止の高まりも受け、紙巻きから加熱式に変える“愛煙家”が後を絶たないが、そんな中で指摘され始めたのが、普及スピードの鈍化だ。
10月23日、日本で加熱式たばこのトップシェアを誇るフィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)の「アイコス」が新モデルとなる「iQOS 3」2機種を発表した(発売は11月15日~)。
既存のアイコスユーザーが抱いていた〈充電時間の長さ〉や〈加熱を行う本体の壊れやすさ〉、〈クリーニングの煩わしさ〉などの不満点を改善したうえに、カラーバリエーションの豊富さを含め、よりスタイリッシュなデザイン性にもこだわったという。
発表会に現れたPMIのCEO(最高経営責任者)、アンドレ・カランザポラス氏も、
「日本は(最初の製品発売から)わずか4年でどの国よりも多くのアイコスファンを獲得した。だからこそ、ここ日本で世界に先駆けて“史上最高”のアイコスを発表することになった」
と新モデルの出来に大きな自信をみせた。だが、その一方で、
「製品の発売だけで、成人喫煙者に紙巻きたばこから加熱式たばこに切り替えていただけるものではなく、さまざまなコミュニケーション活動を通じて製品の特性を正確に理解していただかなければならない。
アイコスは紙巻きたばこを吸い続けるよりも害のリスクは少なくなることが見込まれる、より良い代替製品。日本が煙のない社会になるためには、政府からの奨励も必要でしょう」
と述べるなど、今後の販売促進には慎重姿勢も覗かせた。
現在、紙巻きたばこも併売するPMIから“脱煙”の言葉が出るのは違和感があるが、じつはPMIはたばこを販売する各国の喫煙文化や喫煙率などを見ながら、将来的には紙巻きたばこからの「撤退」を宣言している。そのため、加熱式たばこが重要な稼ぎ頭となるうえ、アイコスがもっとも売れている日本は、紙巻き→加熱式への完全シフトを実行する重点市場となっているはずだ。
だが、その先行きには暗雲も漂っている。