豊洲などの魚市場に密漁魚が出回り、それが暴力団の資金源になっている──話題書『サカナとヤクザ』でフリーライター・鈴木智彦氏は両者の知られざる関係に迫った。今から15年前、同じく食肉とヤクザの関係性を暴いたのがジャーナリスト・溝口敦氏の『食肉の帝王』である。私たちは“食べる”という行為で反社会勢力に協力しているのかもしれない──タブーに迫る特別対談。
溝口:僕は今までヤクザと漁業とのつながりはほとんど知らなかった。流通するアワビの半数が密漁品で、そこにはヤクザが関与しているとは驚きました。しかし、ヤクザの習性を考えてみればもっともなんですね。彼らは誰でも獲っていいよというものではなく、“獲っちゃいけないものを獲る”習性なんです。なぜなら、禁制品の取引は、儲けが大きいから。
鈴木:ルールを破るからこそ価値がある。
溝口:アメリカの禁酒法と同じですよね。禁酒法時代に密流通するウイスキーの値段は高騰した。だからこそ、マフィアはウイスキーで大儲けしたわけです。
鈴木:アル・カポネの世界ですね。
溝口:ウナギにしても、絶滅危惧種と煽られれば煽られるほどヤクザとしてはシノギとしておいしくなる。禁漁というルールがあるからこそ、ヤクザの付け入る隙があるんですね。