人間ドックの予約サイトを覗いてみると、約30種類もの検診・検査が…。それをすべて受けたなら、数万円はくだらない。さらに、検診にもリスクが伴うという。では、「受けざるべきではない検診」はなにか? プロに聞いてみた。
プロが敬遠する検診について、複数の医師が「絶対に受けない」と明かしたのが腫瘍マーカー検査だった。
内科医の松本賛良先生はこう語る。
「腫瘍マーカー検査は、すでに診断されたがんに対し、手術がうまくいったか、抗がん剤が効いているか、など治療の経過を把握するために開発されたもの。今のところこの検査だけで、早期がんが確実に見つかる、あるいはがんではないという診断がつくものではありません。もし腫瘍マーカー検査を行うのであれば、関連する画像診断も一緒に受けた方がよいでしょう」
産婦人科医の高橋怜奈先生も同意見だ。
「私も腫瘍マーカー検査は受けません。体調や生理などで数値が上がったりするし、マイナスの値でもがんのこともある。これで安心してしまったら困るし、値段も高いからまともな医師ならやらないと思います」
意味がないわけではないが、デメリットの大きさから避けたいという意見が上がったのがCTスキャンだ。
「胸部CTスキャン検査はやりません。X線写真1枚で異常がないなら、やる必要を感じない。なぜかといえば、CTの放射線被ばく量はレントゲン150枚分にもなる。少なくとも、定期的にやる必要はないと思います」(形成外科医・齋藤真理子先生)
やはり、医師の知恵は即戦力を発揮する。簡単なのに、意外と実践されていない賢い受け方を提案する声もあった。乳腺外科医の矢加部文先生が言う。
「乳がん検診・婦人科検診・胃カメラなどそれぞれのかかりつけ医を決め、検診はすべてそこで受けることです。長い期間カルテの蓄積があり、体の状態を把握してくれている医師は、自分以上に体の状態を理解してくれる存在。小さな異変にも気づいてもらいやすい。長くつきあえて、信頼に値するかかりつけ医をつくり、そこにお任せしましょう」
また、「検診で何より大事なのは結果を受け取った後」と話すのは、渋谷セントラルクリニック院長の河村優子先生だ。
「生活習慣病はもとより、がんや認知症を含めた多くの病気の原因は食事や運動、喫煙、アルコールといったライフスタイルです。検診の結果が陰性であったとしても、それが今後も続くかどうかは別問題。また、ここ最近では目に見える大きさのがんになる前から早期発見・未然に防止するためのがんの遺伝子検査もできるようになってきました。検診は、受けっぱなしでは意味がないのです。だから、必ず検査結果をもとに、ライフスタイルについてアドバイスをもらえる医師の検診をおすすめします」
結果に一喜一憂するより、今後の健康維持が大切なのは間違いないだろう。医療の専門家であり、女性である彼女たちの貴重な意見を胸に刻みたい。
※女性セブン2018年11月8日号