糖尿病、認知症、誤嚥性肺炎といった重大疾患の発症のカギは「日々の歯みがき」にある──まさかと思うかもしれないが、それを裏付ける医学研究が続々発表されている。“正しい磨き方”を身につけないと、最悪の事態が訪れてしまうのだ。
◆口内細菌が体内を巡って…
朝食後や就寝前など、毎日の歯みがきを欠かさない人は多いだろう。
実は、歯みがきは正しく行なわないと意味がないどころか逆効果になる──そう指摘するのは、日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座の沼部幸博教授だ。
「間違った歯みがきを行なうと、歯と歯茎の間にあるプラーク(口内細菌の塊)を除去できません。いくら“自分は毎日きちんと歯を磨いている”と思っていても、プラーク内の歯周病菌は繁殖し、歯周病を発症してしまうケースがとても多い」
厚労省の調査では、60代の9割が罹患する歯周病(平成23年歯科疾患実態調査)。軽い腫れや出血など初期段階の「歯肉炎」と、膿が出たり歯がぐらつくなど重症化した「歯周炎」の二段階があり、初期段階で対処せずに放置を続けると、歯茎が炎症を起こして歯を支える骨が溶け、最終的に歯が抜け落ちる。
間違った歯みがきが本当に怖ろしいのは、罹患するのが「歯の病気」に限らないことだ。間違った歯みがきによってリスクが上昇する病気として、沼部氏はまず「糖尿病」を挙げる。