豊洲などの魚市場に密漁魚が出回り、それが暴力団の資金源になっている──話題書『サカナとヤクザ』でフリーライターの鈴木智彦氏は両者の知られざる関係に迫った。今から15年前、同じく食肉とヤクザの関係性を暴いたのがジャーナリスト・溝口敦氏の『食肉の帝王』である。私たちは“食べる”という行為で反社会勢力に協力しているのかもしれない──タブーに迫る特別対談。
鈴木:私がサカナとヤクザの関係を追うきっかけは、溝口さんが食肉とヤクザについて追及していたからです。2003年刊行の『食肉の帝王』で大阪の食肉卸大手、ハンナンの浅田満・元会長と暴力団の関係をすべて暴露したことに衝撃を受けました。浅田元会長は山口組五代目・渡辺芳則組長のタニマチと言われていて、2人の関係に触れるのはアンタッチャブルと言われていた。なぜこれをやろうと思ったんですか?
溝口 当時は狂牛病(BSE)騒ぎで、政界にも太いパイプがあった浅田は最大規模の牛肉を国に買い上げさせた上で、全量を焼却させたんです。しかし一方で、その権勢が綻びかけているようにも見えた。だから今やるしかないと。
鈴木:刊行して1年後に浅田元会長は逮捕されました(*1)。それも見越していたんですか?
【*1:ハンナンの浅田元会長は、BSE対策事業の一環として行なわれた国産牛肉買い取り事業を悪用したとして、計50億円あまりの詐欺や補助金不正受給などの罪で2004年に逮捕され、実刑判決を受けた】