警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ある暴力団関係者が積水ハウスの地面師事件とパスポート偽造についてディープな情報を明かす。
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積水ハウスが約55億円をだまし取られた地面師事件は、地上げをシノギとする暴力団でも首を傾げることが多いという。
「不動産なんて、ほんとに欲しい人は誰が持ち込もうと関係ない。ロクでもないブローカーが持ってきた案件でも、成立すればいいんです。でもね、確認や内見したといっても、あれだけ大手が一気に金を払うなんて考えられない。他にもいろいろ噂が流れていたのに、実際あの金額が動いている。それに去年、この事件が表沙汰になった時、積水はまだ所轄署に詐欺相談をしただけで、被害届は出していなかったと聞くしね。内部で何があったんだろうって思っちゃうわけですよ」
暴力団幹部ですら、ズサンすぎると呆れるぐらいのこの事件。
「あそこは最初、違う地面師が扱ってたって話で、養子に入れて…というたくらみがあったと聞いてます。でも実際はなりすましが出てきた」
なりすまし役の羽毛田正美容疑者が身分証明に使ったのはパスポートだ。運転免許証など持たない高齢者では、身分証明にパスポートを使うことも多い。羽毛田容疑者の逮捕容疑は、パスポートなどの偽造有印私文書行使など書類の偽造であり、55億円の詐取容疑ではない。
パスポートについては精巧な偽造だと報道されているが?
「いや、あれは本物だと思いますよ。偽造された本物のパスポート」
“偽造された本物”とは…?
「パスポートの偽造は、戸籍謄本さえ取れれば簡単だからね」
今は個人情報の問題で、戸籍謄本を簡単に取れなくなった。そのため偽の弁護士事務所の名刺を作って、謄本を取ろうとするケースや、本人の委任状を作り身分証明書と一緒に持っていくという手を使うこともあるという。
実際のやり口はこうだ。
「なりすました者がパスポートを取るには、その人に合った年齢が条件。写真は規格通りであればOK。あとは申請する場所が問題。今回のように地主本人の本籍地が東京で、なりすましがパスポートを身分証明に使うなら、申請するのは東京じゃないとまずい。でも同じ区である必要はない。パスポートの本籍には“東京都”としか載らないからね」
確かにパスポートの本籍地には、都道府県しか載っていない。今や運転免許証ですら本籍地は載っていない。
「戸籍謄本が取れれば、まずは勝手に他府県に本籍を移動する。東京なら神奈川に移転。次に神奈川から埼玉に移転する。その後に埼玉から東京の違う場所、本当の本籍地が港区なら新宿区でも足立区でもいいから移動。そして本籍地を移動したと同時に、住民票も移転」
手間暇と時間をかけて、彼らが用意しているのがわかる。
ところで、何度も移動してバレないものなのか?
「よっぽどのことがない限り、普通は住民票や戸籍謄本なんて取りにこない。だから勝手に移転されていても、それに気がつくことはないね。
それで申請すれば、パスポートを取ることができる。パスポートセンターは申請した人の顔と顔写真が一致して、有効期限内の必要書類が出ていればいいわけで。その後で、手書きで必要な住所を書いておけばいい。その住所が本当に必要かといえば、みんなそこまで見ないんでね」
移動した本籍と住民票はどうするのか?