音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、将来楽しみな若手から大名跡までが揃う一門会についてお届けする。
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9月12日、人形町の日本橋社会教育会館で「三春会」を観た。春風亭一朝とその弟子の柳朝、一之輔の3人による親子会という趣旨で、これが第1回。「みはるかい」と読むのだということは当日楽屋に来るまで誰も知らなかったそうだ。
開口一番は一朝の九番弟子の一猿が『松竹梅』を披露。前座にしては達者な口調で将来が楽しみだ。
続いては一朝の三番弟子、三朝。彼はレギュラーではない。二ツ目の「朝也」時代にNHK新人演芸大賞(2014年)を受賞した経歴を持つ有望株で、この日の演目は『猿後家』。ハリのある声でテンポ良く演じる「後家の機嫌を取る男」がニンに合っていて楽しい。
この噺、かつては小三治が、近年では志の輔が、それぞれ「結局しくじる」皮肉なサゲで演じているが、三朝はオーソドックスに「木から落ちたサ……猫同様でございます」と踏みとどまる型。
次は大師匠の名跡を継ぎ六代目となって11年の柳朝。淀みのない滑らかな口調とスマートな芸風で江戸落語を綺麗に聞かせる演者だ。この日演じた『唖の釣り』は八代目林家正蔵が上方から東京に移植した「お家芸」。七兵衛が仕草で言い訳をする場面で無理に笑わせようと押さないところに好感が持てた。
休憩を挟んで一之輔が『化物使い』を。働き者の杢助のくだりは手短に済ませつつ、杢助の台詞の独自性で笑いを取るあたりはさすが一之輔。後半は、一つ目小僧に「もっと元気よく挨拶しろ!」と強要したり、大入道の脛にパンチを連打したりと、吉田のご隠居の化物たちへの対応が抜群に可笑しい。ご隠居の描写だけで化物たちの戸惑う様子がありありとわかるのが一之輔の上手さだ。