豊洲などの魚市場に密漁魚が出回り、それが暴力団の資金源になっている──話題書『サカナとヤクザ』でフリーライターの鈴木智彦氏は両者の知られざる関係に迫った。今から15年前、同じく食肉とヤクザの関係性を暴いたのがジャーナリスト・溝口敦氏の『食肉の帝王』である。私たちは“食べる”という行為で反社会勢力に協力しているのかもしれない──タブーに迫る特別対談。
鈴木:面白いのは、漁業出身の組長は多いけど(*注)食肉業界出身の組長っていないんですよね。
【*注:六代目山口組の司忍組長は大分水産高校を卒業した後、下関で大洋漁業の漁船に乗っていたという】
溝口:それはヤクザになるより食肉業界にいたほうが儲かるからですよ。そういえば、米や野菜もヤクザが関与するとは聞かない。
鈴木:農協の力が強すぎるからですかね。今は飲食店からのみかじめ料も取れなくなってますしね。
溝口:商店主がヤクザをバカにしてますからね。一方で、いまだに変わらないのがテキ屋ですね。テキ屋をシノギにする小さな組だけでなく、テキ屋系でない大暴力団にも加入する者がいるなど、切っても切れない関係にある。
鈴木:祭りのテキ屋には今でも組員がいるんだけど、警察がうるさいからとりあえず暴力団とは伏せている。俺たちが取材に行って「写真を撮りたいんですけど」って言うと、「僕らテキ屋ですから」って写ろうとしない。あくまで建前ですがね。
ヤクザとテキ屋の関係性をツッコまれて困るのは、警察も一緒です。警察は分かっていて、それでも「町の活気作りのためにテキ屋が必要だ」という意見に乗って排除していないわけだから。