杉田水脈衆議院議員による、LGBTには生産性がないから税金を使う支援をする必要はないという主張は、大きな波紋を広げ、いまだに様々な形で世間を賑わせている。「生産性」というキーワードについて、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏と思想史研究者・慶應大学教授の片山杜秀氏が語り合った。
佐藤:自民党の衆議院議員である杉田水脈が『新潮45』(8月号)で〈LGBTのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです〉と主張して、批判が殺到しました。9月にまたも杉田擁護の特集(10月号)を組み、世間を騒がせ、結局休刊騒動に至ってしまった。
片山:経済成長と人口増加が好循環で支え合う。経済成長は一般に消費者と労働者の増加を前提としてきたから、両方が右肩上がりでこそうまく行く。でも平成に入り、そのモデルがすっかり崩れた。そこで普通に考えると、出産が減るのは、産みたくても産みにくい社会環境があるという議論が先行すべきなのに、杉田議員は同性愛カップル等の話に行き、しかもLGBT支援と呼ばれるものの実態認識も不十分と思われ、さらにコミンテルンの陰謀論まで入ってくる。
佐藤:あの人たちは真実の歴史はネット上にしかないと考えていますからね。
片山:そういう国会議員は近年増加していますね。
佐藤:私は杉田論文で書かれた“生産”というキーワードにファシズムとの親和性を感じました。分配よりも、生産に力を入れるという発想は戦前結成のファシスト政党である大日本生産党を連想させる。