東京から電車で1時間ちょっと。歴史的遺産も新しい名店も共生している鎌倉は、歩くたびに発見がいっぱい。鎌倉在住の作家・甘糟りり子さんがとっておき散策コースを教えてくれました。
【プロフィール】
甘糟りり子/あまかす・りりこ
作家。1964年横浜生まれ、3才から鎌倉在住。鎌倉の魅力を鮮やかに描いたエッセイ『鎌倉の家』(河出書房新社)にも甘糟さんご贔屓の店が綴られている。11月18日(日)19時より、東京・代官山 蔦屋書店にて、刊行記念トークイベント&サイン会を実施。
* * *
50年ほど鎌倉に住んでいる私なりに、この土地の個性を考えてみたら、「ぬけ感」とか「透け感」という言葉が頭に浮かびました。最近、ファッション雑誌などでよく見かける言葉です。肩に力を入れすぎず、どこかにドレスダウンを取り入れよう、といった感覚だと解釈しているのですが、鎌倉の個性ってこういうことではないかと思います。大仏や観音様、お寺に神社がたくさんあって、すぐそばにサーフショップやパン屋さんやTシャツ屋さんが並んでいて、その間を江ノ電が横切っている。古都の味わいを探すもよし、海の街ならではの風通しを楽しむもよし。いろんな意味で「適当」が似合うのです。
秋はそんな鎌倉らしいぬけ感を楽しむのにいい季節。夏の眩しさも冬のしっとり感も好きですが、もっともバランスよく街を味わえるのは11月ではないでしょうか。晴れた日なら、重ね着で歩き回るとちょっと汗ばむぐらいです。
鎌倉界隈はレストランやバー、カフェも充実しています。お食事をとる時間はぜひ、ゆっくりと。あちらこちらを歩き回るよりも、目的地を絞って気に入ったところでいつもよりスローな時間を過ごしてもらえば、この街の個性が伝わるのではないかと思っています。
よそゆきでもなく普段着でもなく、ちょっとだけドレスダウン。そんな鎌倉歩きはいかがでしょう。
〈寄稿/甘糟りり子〉
■イチリンハナレ
住所:鎌倉市扇ガ谷2-17-6(鎌倉駅から徒歩約15分)
営業時間:11:30~15:00、17:30~22:00
定休日:月曜(臨時休業あり)
鎌倉の屋敷街に佇む、瀟洒な日本家屋の中華レストラン。基本はコース(昼3500円~、夜1万円~)だが、リピーター続出のシーズンメニュー「白子入り陳麻婆豆腐」はアラカルトで追加注文可能。甘糟さんにとって齋藤宏文シェフとの会話もご馳走のひとつ。