いま、この国では国民が代々受け継いできた“財産”が次々と外国に売り払われている。今年6月、安倍政権は自治体に公営事業売却を促すPFI法改正案を成立させ、「世界で最も安全で安い」といわれる日本の水道事業の民営化を促している。また、昨年2月には、これまで国がコメ、麦、大豆の3品種を保護してきた「種子法」(1952年制定)の廃止を閣議決定。国会ではわずか衆参12時間の審議で可決成立した。
そして、日本の森林も「丸裸」になる。
今年5月、林業政策を大転換する森林経営管理法が成立した(来年4月施行)。自治体が「森林所有者には森を管理する気がない」と判断すれば、たとえ所有者が反対しても業者に委託して森林を伐採できるようになり、切り出した木材の販売利益は伐採業者が優先的に得るという法律である。
これまで日本の林業は安い輸入材に負けていたが、自然エネルギーのバイオマス発電ブームで国産材の価格が急騰。そのうえ、戦後の拡大造林計画で全国に植えられた杉や檜が収穫期を迎えている。林業業界にとっては「宝の山」だ。
そこで林野庁は売り時を逃さないために自治体に“強制伐採”の権限を持たせ、「樹齢51年以上の木を主伐(全部伐採)」という方針を打ち出した。
しかし、豊かな森林は治水と防災、そして沿岸漁業の源だ。伐採後は植林するルールとはいえ、山ごと主伐すれば保水能力を失って災害に弱くなる。林業学者の多くは「この法律で無秩序に林道が作られ、日本の森林が丸裸にされて豪雨被害が大きくなる」と警鐘を鳴らしている。