ラジオの地上波放送をネットで配信するサービス「ラジコ」の登場もあり、個性的なメディアとして復権しつつあるラジオ。長寿番組があることも特徴的。毎日、お決まりの時間にスイッチを入れれば“あの人”の声が聞こえることが、ラジオの大きな魅力なのだ。
1990年に始まった『ラジオ深夜便』(NHKラジオ第1)は毎日深夜11時15分から翌午前5時までの生放送。「アンカー」と呼ばれるパーソナリティーが番組進行を担当し、深夜・早朝にもかかわらず200万人のリスナーを誇る。
チーフプロデューサーの浦田典明さんは「主なリスナーは60代以上です」と言う。
「人生を豊かにする教養や年齢を重ねてこられたゲストの深みのある話をお伝えして、第2の人生を歩んでいる60才以上のリスナーから支持されています。特に人気なのは、午前4時台の『明日へのことば』というコーナー。著名、無名を問わず一生懸命生きてこられたかたの生き様や人生観を40分にわたってお伝えします。早朝の放送にもかかわらず、熱心に聞かれるコーナーです」
現在18人いるアンカーの1人、遠藤ふき子さん(72才)は1993年からアンカーを務める。長寿番組となった秘訣は「安心感」であると指摘する。
「ひとり暮らしのかたや、介護をしていて睡眠が不規則なかたは、深夜にラジオから聞こえる“いつもの声”に安心感を抱くのではないでしょうか。歌謡曲からポップスまで懐かしい音楽が流れるため、世代ごとに青春時代に戻れることもポイントです」
朝日放送ラジオ(ABC)の『おはようパーソナリティ道上洋三です』は1977年から続く長寿番組だ。
41年にわたってパーソナリティーを務める道上洋三さん(75才)は、今年7月から髄膜腫治療のため2か月休養したが、治療を終えて9月に生放送に復帰した。大の阪神ファンである道上さんは闘病の疲れも見せず、よく響く声で言う。
「番組を始めたのは34才の時でしたが、今では社長も常務もみんな年下で、この会社にぼくより年上はいませんよ(苦笑)。毎朝6時半スタートなので深夜2~3時に起きる必要がありますが、プロ野球のシーズン中は阪神のナイターを見なければいけないので、睡眠時間は4~5時間。起床時に睡眠不足で不機嫌な自分を何とか上機嫌にして生放送に臨んでいます」
阪神タイガースが優勝した時も、阪神・淡路大震災の時も、常にラジオとともに歩んだ道上さんは、「ラジオ番組の宝はリスナーです」と言う。