元ヤクザの私立探偵(矢能政男)に舞い込んだ1本の依頼がきっかけで、情報屋や政治家の用心棒、ワケあり刑事、死体の掃除屋など、次々と癖の強いアウトローたちが奇妙な事件に関与していく──犯罪エンターテインメント映画『アウト&アウト』が11月16日より全国公開される。
メガホンを取ったのは、同名小説を書いた“きうちかずひろ(木内一裕)氏”。『BE-BOP-HIGHSCHOOL』で一世を風靡した漫画家でもある。長編映画の監督業はじつに18年ぶりのきうち氏だが、矢能役に抜擢した俳優・遠藤憲一とは撮影現場で度々衝突したという。映画のストーリー同様、波乱続きの“場外バトル”。その顛末を聞いた。
──矢能政男はそもそもどんなイメージで描かれたのですか。
きうち:原作でも書きましたが、ルックスはアメリカの映画俳優ウィレム・デフォーをイメージしていました。ハンサムには程遠いけれど決して醜男ではなくカッコイイ。シュワルツネッガーやスタローンのようにマッチョではないけれどタフで頼もしさもあるイメージです。
──そういう意味では遠藤さんがもっとも理想像に近かったと。
きうち:「日本のウィレム・デフォーは誰か」と考えたとき、遠藤さんがパッと浮かびました。いまは映画やテレビドラマ、CMなどで引っ張りだこなので、お願いするなら今しかないと思い、ご出演いただくことになったんです。
──遠藤さんも原作を読まれて快諾された。
きうち:それが、実際にお会いしてみると、こちらが想定していた矢能像とはまったく違うキャラクターを演じたいと思われたみたいで……。あまりにも私のイメージとは乖離していたので、最初は何を言われても聞こえないフリをしていました(笑い)
──遠藤さんはどんな探偵を演じたかったのでしょうか。
きうち:まず風貌からして意見が合いませんでした。私のイメージではスーツをきちんと着て、髪型も整えてほしかったのですが、遠藤さんのイメージする探偵は、頭はボサボサ、ヨレヨレのレインコートみたいな服を着ている。そして、夜の盛り場の裏通りあたりで殴られて、水溜まりで嘔吐する……みたいなダメさ加減を表現したかったようです。
確かに、頼りなさげな探偵も魅力ありますし、役者としては、そういうキャラクターこそやりがいがある。それはそうだと思いますが、今回の作品はそうじゃないと。