10年以上前、女優の故・樹木希林さん(享年75)と何度か、がんについて対談した諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師(70)。対談をきっかけに、何度かプライベートでの交流もあった鎌田氏が、滅多に家に帰ってこなかった彼女の夫・内田裕也(78)よりもロックだった生き方を振り返る。
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樹木さんのお宅に呼ばれたとき、夫・内田裕也さんの若いころのポスターが飾られていたのを今でも覚えている。滅多に帰ってこない夫。帰ってきたときには、ガレージでガタガタと音を立て、「こんなすごい家、建てやがって」と悪態をつきながらやってくると楽しそうに語っていた。
一見すると樹木さんが、ハチャメチャな裕也さんが暴走しないように、手綱を引いているように見える。でも、実際のところ、樹木さんのほうが裕也さんを焚き付けていたのかもしれないと思えてきた。もっと内田裕也らしく破天荒に生きろ、と。
「物づくりというのは、片方で壊しているんです」
樹木さんは、そんなハッとするようなことも言った。つくることは壊すこと。その逆も真なりで、壊すことはつくることでもある。
二人はいつも一緒にいるような、わかりやすい夫婦関係ではなかった。安定した関係や家庭の団らんを求めるのではなく、関係を壊しながら新たに再生していくような絆が、二人の間にあったのではないかと感じた。だとすれば、樹木さんは裕也さん以上にロックンローラーだったように思う。