音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、二ツ目・立川こはるの「女性なのに男前」な二ツ目ブーム人気に甘んじない姿勢についてお届けする。
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立川談春門下の「女性なのに男前」な二ツ目、立川こはる。彼女は今、新宿文化センター小ホール(客席数210)での独演会で、将来の真打昇進に向けて腕を磨いている。
昨年この会場で3回の独演会を行なったこはるは、今年4月に改めて隔月の定例独演会として再スタートを切ったが、ハプニングはその4月の会で起こった。こはるがトリネタ『不動坊』を演じた後、談春が飛び入りしたのだ。
こはると並んで立ち「御贔屓いただきありがとうございます」と客に礼を述べた談春は、こはるの『不動坊』の技術的な問題点を指摘して「今のままだと私の価値観でこいつを真打にすることはない」と言いながら、「でも『お客さんが認めちゃってる』という状況を作ったら真打にするしかない」と続け、「今後とも可愛がってやってください」と締めた。談春らしいエールの贈り方だ。
あのときは空席が目立っていたが、回を重ねるごとに動員も伸び、10月13日の「第7回」ではほとんどの客席が埋まっていた。この日、こはるが演じたのは『風呂敷』『品川心中(上)』『五貫裁き』の3席。