2018年4月25日。西城秀樹(享年63)は、いつも通りに約3時間に及ぶリハビリを終えて帰宅し、妻の美紀さん(46才)と母、中学2年生の次男・悠天くんとともに夕食を楽しんでいた。その日はたまたま、高校1年生の長女・莉子さんと中学3年生の長男・慎之介くんは部活動で帰宅していなかったが、自宅2階にあるダイニングで、家族そろっての夕食を囲んだ。
テーブルに並んだのは、スペアリブ、ポトフ、サラダ、そして秀樹の好物である白いご飯。いつもどおり、肘掛けのある白い椅子に腰を下ろした秀樹は、これらをきれいに平らげる。
直後のことだった。夜7時頃、秀樹の体は椅子の上で反り返ったまま、動かなくなってしまった。異変に気づいた美紀さんが呼びかけるが、全身が痙攣を起こし、椅子から転げ落ちそうになっている。
「パパ! どうしたの?」
美紀さんは秀樹を椅子から下ろして体を揺すりながら、次男に「救急車を呼んで!」と叫んだ。
大学病院の救急救命室(ER)に運び込まれ、処置が始まる。長女、長男、そして事務所のスタッフも駆けつけ、全員が無事を祈り続ける。懸命の治療、そして家族の思いによって止まっていた心臓は再び動き始めたが、医師の口から発せられた言葉は、あまりに残酷なものだった。
「残念ですが、意識が戻る可能性はありません」
約40分間の心臓停止により、脳に充分な酸素が行き渡らなかったことから、脳死の可能性が高いという説明もあった。「もって1週間」とも。
それでも、秀樹は生き続けた。意識は戻らず、話もできない状態でも、倒れた日から3週間、これまでと同じように「また言葉を交わせるのではないか」「ステージに立てるのではないか」という淡い希望を、見守る家族に抱かせた。
しかし、ついにそのときが訪れる。5月16日、深夜。家族が見守るなか、医師の言葉が病室に響いた。
「5月16日23時53分、ご臨終です」
63才。余りにも早すぎる旅立ちだった。
──あれから半年。妻の美紀さんが『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』(小学館刊)を上梓した。
「正直に言えば、これまでお話ししてこなかったことを書いて公にすることに、戸惑いもありました」
美紀さんが言う。
「秀樹さんの症状を病院で先生に伝えたり、のんでいる薬を把握するために書き留めていたノートが数冊あります。病状の変化や日々の食事、担当医とのやりとりをメモにとってきました。秀樹さんの頑張ってきた日々の記録が、どなたかのお役に立てれば本当にうれしいです」
美紀さんの著書には、知られざる秀樹の素顔、そして過酷な闘病の日々が綴られている。