「ラブシーンは自然体で演じることができました。むしろ、一夜明けて、朝食にトーストを出すシーンの方がよっぽど緊張しました(笑)」
こう話すのは、モデルで女優の日南響子(24)。彼女が体当たり演技を見せたのが、話題の映画『銃』(11月17日公開)だ。
『銃』は芥川賞作家・中村文則氏のデビュー小説が原作で、『百円の恋』などを手がけた武正晴監督が初の映像化。河原で偶然拳銃を拾った一人の大学生がその銃の魅力に取りつかれ、狂気を帯びていく様を美しいモノクローム映像で描いている。
日南が演じたのは、主人公のトオル(村上虹郎)とワンナイトラブの関係になる、通称“トースト女”。一糸纏わぬ姿で大胆なシーンに挑んだ日南に作品への想いを聞いた。
「私の撮影は居酒屋でトオルと出会うシーン以外は、部屋でのラブシーンが中心でした。段々と狂気を帯びていくトオルと何度も触れあうことで、彼の変化を感じていくという役どころです。台詞はほとんどない役ですが、“空気でお芝居をする”難しさがありました」
今回が初共演となる村上とは、あえて相談せずにラブシーンに臨んだ。
「変に意識してしまうと、動作や表情がぎこちなくなる。虹郎君がどう演じるか知らない方が、逆に生々しく映るんじゃないかと思ったんです。モノクロで、しかも台詞も少ないので、表情やちょっとした動作が重要になります。トースト女は一見ただの都合のいい女に見えるけど、実は複雑なオンナ心を隠し持っている。それを全身を使って表現することに集中しました」
日南が演じていて大変だったのは、むしろ日常の何気ないシーンだったという。