「この世の中は、負けるとわかっていても、戦わなきゃならん時がある。たとえ殴られ蹴られ、殺されても、逃げちゃならん」
『九十歳。何がめでたい』が朗読劇の舞台になる。ベストセラー・エッセイを朗読するだけでなく、みずから舞台化を企画した三田佳子さんが作家の「佐藤愛子」となって、タクシー運転手とスマホをめぐってやりとりしたり、強面の金貸しと対峙する、白熱した場面もある。
128万部を突破する昨年最大のベストセラー『九十歳。何がめでたい』がこのたび、朗読劇になった。先日95才になった著者・佐藤愛子さんを演じるのは、77才の女優・三田佳子さん。実は佐藤さんを口説き落とし、演出を石井ふく子さんに頼み、今回の舞台を実現させたのは他ならぬ三田さんだ。「先生の生き方は私のあこがれで、50年前からずっと演じてみたかったんです」と言う三田さんが、佐藤さんと本書の魅力を語り尽くした。
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愛子先生の世界に惚れ込んでいます。『九十歳。何がめでたい』も、発売されてすぐに読みました。いまはビジュアルの時代といわれますけど、愛子先生は文字だけで声を出すほど笑わせ、泣かせてくれる。すごいことです。
怒って、笑って。先生の人生に心地よいリズムがあるんでしょうね。怒りながらも温かくってね。だからこそ、誰にでも伝わるものがあるし、老若男女が飛びつく大ベストセラーになったんでしょうね。私なんて、増刷されて帯が変わるとまた買ったりして、何冊も手元にあります。
何より、『九十歳。何がめでたい』というタイトルがすばらしいんですよね。90才ですよ! 自分のエッセイ集にこんなに堂々と「九十歳」とうたう、そのすてきさ。私は、先生から見れば若干…。いえ、若干どころではなく70代ですけど(笑い)。70代といっても、もう半ばすぎですから、ここを逃すと、これから活気のある舞台をやるのは難しくなってくるかもしれない。
「いまだ!」と思って、先生に「舞台にさせてください」とお電話したんです。そうしたら先生は、「あなた、これは小説とは違うから舞台にするのは難しいわよ」って。
私ね、はじめから、演出は石井ふく子先生にお願いしたいと思っていて。ふく子先生は、愛子先生より少し年下ですけど、やはり90代の現役です。「何がめでたい」と言い切る愛子先生の迫力と、90才で生きることを生身で知ってらっしゃるふく子先生の迫力、おふたりの力が合わさったものを、ぜひ形にしたいと思ったんです。