欧州では激増した難民にまつわる問題が若者の右傾化を招いていると言われる。日本では、海外からの難民問題はまだ発生していないが、内側に“高齢者”という難民を抱えていると作家の橘玲氏は指摘する。
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中東やアフリカからゆたかなヨーロッパに押し寄せる難民は、さまざまな事情から、自分一人のちからでは生きていくことも家族を養うこともできなくなった「かわいそう」なひとたちだ。
リベラルな社会は、不幸なひとは適切な援助を受ける権利があると考える。難民に住居や仕事、生活保護などを与えれば、彼らは幸福になり支援する側も満足するだろう。しかしすぐにわかるように、こうした好循環が成立するのは難民の数が少ないときだけだ。
受け入れる難民の数が増えてくると、ひとびとはすこしずつ不安になっていく。治安が悪化するとか、低賃金の仕事を奪われるということもあるだろうが、高度な福祉国家に暮らすひとびとがもっとも恐れるのは、年金や健康保険など自分たちの既得権が失われることだ。
彼ら/彼女たちがこれまで高い税金を払ってきたのは、老後の安心した暮らしを国家が保障していたからだ。難民救済のためにその約束を反故にされるなら、なんのためにこれまでつらい人生に耐えてきたのかわからない。こうして、世界でもっともリベラルなはずの北欧諸国で移民排斥の「極右」が台頭する。
日本は(これまでのところ)ヨーロッパのような移民・難民問題を抱えてはいないが、社会保障制度が危機的な状況にあることは同じだ。その理由はいうまでもなく少子高齢化で、これからますます支援すべき高齢者の数は増えていく。その結果、この国の若者たちは高齢者を重荷に感じるようになってきた。