いきなり意識を失って倒れる脳梗塞は、体内の血管でできた血栓が血液にのって運ばれて、脳で詰まったときに起こるが、これは脳梗塞のなかでは比較的珍しい症状で、実際に多いのは、「隠れ脳梗塞」。自覚症状がないまま何度も繰り返し発症することで深刻なダメージをもたらすという。
隠れ脳梗塞の恐さが克明に綴られた一冊がある。今年5月に逝去した歌手・西城秀樹さん(享年63)の妻・美紀さん(46)が17年間にわたる闘病生活を記した『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』だ。
秀樹さんが脳梗塞だと報じられたのは、2003年と2011年の2回だった。だが、著書では、秀樹さんが8回にわたり繰り返し脳梗塞を発症していたこと、その原因が若い頃からの持病だった「糖尿病」にあったことが初めて明かされている。
隠れ脳梗塞になりやすい人はどんな特徴があるか。まず注意すべきは年齢だ。隠れ脳梗塞が見つかるのは「60歳以上」が多く、脳ドック受診者のうち60代の約2割、70代の約3割に見つかるとされる。
そこに様々なリスク要因が複合的に積み重なる。「糖尿病」は大きな要因だ。くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋医師が語る。
「糖尿病患者は血糖が血管内にベタベタと付着し、血管のしなやかさがなくなるため動脈硬化を起こしやすい。2型糖尿病患者の半数以上に隠れ脳梗塞が認められたという報告があります。血糖値は食習慣によって上がります。2~3時間の短い間隔で食事をとる人や、かきこむように食べる早食いの人は、食習慣を見直すべきでしょう」