近年、世界各国で健康への弊害が指摘される物質、「トランス脂肪酸」をご存知だろうか? トランス脂肪酸は、液体の植物油などを固める加工過程で生成される物質で、体内で代謝されないことから、「食べるプラスチック」と称される。マーガリンやパン、ケーキやドーナツといった食品に含まれることが多い。
杏林予防医学研究所所長の山田豊文さんが言う。
「海外の研究では、トランス脂肪酸の危険性が数多く報告されています。心臓疾患、がん、認知症、糖尿病、うつ病、不妊や子宮内膜症などに加え、特に危険なのは胎児の脳発達に不可欠なDHAなどを阻害してしまうこと。妊娠中はとりわけ注意が必要です。世界では多くの国々が対策を進めており、アメリカ食品医薬品局やカナダ保健省は相次いでトランス脂肪酸を含む油脂類の原則使用禁止を決定した。日本でも早急に規制すべきです」
しかし、現状、日本では使用制限がないばかりか、商品への表示義務すらない。商品のパッケージを見ても、トランス脂肪酸を含むかどうか見分けられない。
『食の安全を考える会』代表の野本健司さんが指摘する。
「主要パンメーカーの多くはホームページ上でトランス脂肪酸の含有量を公表しています。神奈川県の学校給食ではトランス脂肪酸を2%以下にするなど、対策が始まっています。とはいえ、トランス脂肪酸の危険についての周知はまだ足りないので、消費者はメーカーのホームページなどで自ら情報を集めてほしい」
世界の中で日本だけが「野放し」になっている成分はほかにも多くある。
『子どもにこれを食べさせてはいけない』(三笠書房)の著者で食品ジャーナリストの郡司和夫さんが警鐘を鳴らす。
「抗菌性たんぱく質の『ナイシン』は原則として世界中で禁止されています。EUでは例外的にチーズなど乳製品のみで保存料として使われます。ところが日本ではチーズだけではなく、食肉製品、ソース、マヨネーズなどさまざまな食品に保存料として使われている。ナイシンの成分は抗生物質であるため、摂取すると、抗菌剤が効かなくなる『耐性菌』が出現する恐れがあり、早急な規制が望まれます」
ほかにも、うま味成分の1つであるたんぱく加水分解物を生成する際に発生し、インスタントラーメンやレトルト食品などに含まれる「クロロプロパノール類」には発がん性が認められている。海外では規制の網がかかるが、日本では規制を免れている。
これから迎える正月の「定番」にも要注意だ。