突然、意識を失って倒れる脳梗塞は、体内の血管でできた血栓が血液にのって運ばれて、脳で詰まったときに起こるが、これは脳梗塞のなかでは比較的珍しい症状で、実際に多いのは、「隠れ脳梗塞」。自覚症状がないまま何度も繰り返し発症することで深刻なダメージをもたらすという。
隠れ脳梗塞の恐さが克明に綴られた一冊がある。今年5月に逝去した歌手・西城秀樹さん(享年63)の妻・美紀さん(46)が17年間にわたる闘病生活を記した『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年』だ。
秀樹さんが脳梗塞だと報じられたのは、2003年と2011年の2回だった。だが、著書では、秀樹さんが8回にわたり繰り返し脳梗塞を発症していたこと、その原因が若い頃からの持病だった「糖尿病」にあったことが初めて明かされている。
病を発症したその先に待ち受けるのは、「後遺症」との闘病生活だ。くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋医師が語る。
「大脳の右側が損傷すると左半身、左側だと右半身に後遺症が残ります。小脳が損傷した場合には、足がうまく動かせず千鳥足になったり、手でモノをつかむことが難しくなります。他に、うまく話せない『失語症』や、ろれつが回らなくなる『構音障害』などがあります」
後遺症から回復するために行なうのが「リハビリ」だ。階段の昇り降りや、机の上に並べた硬貨をつまんで持ち上げる、などといった単純運動の繰り返しのほか、言語機能の回復には、割り箸を奥歯で噛んだり、何度も本の朗読を繰り返すといったものもある。
秀樹さんも、過酷なトレーニングに励んでいた。