日本が、いや世界が驚いた逮捕劇。コラムニストの石原壮一郎氏は、堕ちたカリスマ経営者の言葉に思いを馳せた。
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いきなり頭をゴーンと、いやガーンと叩かれたような驚きのニュースでした。東京地検特捜部は19日、日産自動車の代表取締役会長であるカルロス・ゴーン氏らを逮捕。発表によると、自らの報酬を50億円少なく有価証券取引所に記載した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いだとか。
ゴーン氏といえば、1999年に日産の最高経営責任者(CEO)に就任し、ピンチだった日産を立ち直らせたカリスマ経営者。ビジネスマンや経営者はその発言をありがたがり、ビジネス誌でも特集を組みまくって、彼から多くを学ぼうとしました。
逮捕はされましたが、事件の真相や背景はまだわかりません。いろんな陰謀論も飛び交っています。水に落ちた犬を張り切って叩くような真似は、大人として慎みたいもの。これまで持ち上げてきたことにしみじみ思いを馳せつつ、彼が発した名言をあらためて噛みしめてみましょう。
これまでの著作、インタビューにある数多くの名言の中から、今だからこそ大人としてより深く味わえそうなものをピックアップしてみました。
〈他人からプレッシャーをかけられたときよりも、自分で自分にプレッシャーをかけて働いている方が、人は遙かに大きなことをやってのける〉
〈素晴らしい計画は不用だ。計画は5%、実行が95%だ〉
仮に報じられているような不正があったんだとしても、それはもしかしたら「自分で自分にプレッシャーをかけ」るためだったのかもしれません。そして、計画したことを着実に形にした実行力は、さすがのひと言です。
〈利益を上げようと努力しないで、どうやって利益を得ることができるでしょう? 魔法でも使わない限り、そんなことはできません〉
彼がこの信念に基づいて、使ってはいけない魔法を使っていないことを祈りたいところです。いや、だとしても本人はきっと「努力」のつもりだったのでしょう。
〈悪い影響が出たらそれを是正するためにすぐに行動しないと、人々は極端な方向に走ってしまう〉
もしゴーン氏が極端な行動に走ったのだとしたら、それは是正するための行動をすぐに起こさなかった周囲にも問題がありそうです。彼ほどの経営者ですから、このことを部下たちに教えたいという狙いがあった……いや、たぶんそういうわけじゃないですね。