「三顧の礼」で迎えられながら、期待された活躍ができない“FA組”は、これまで数多くいた──。メジャーリーグを参考に、日本球界にFA制度が導入されたのは1993年オフのことだ。以降、権利を行使して国内の球団に移籍した選手はのべ86人いる。プロ野球のデータに詳しいジャーナリストの広尾晃氏が解説する。
「大枚をはたいて獲得しても、主力として活躍する期間は平均して2年程度。移籍前後の成績を比べると、移籍後にキャリアハイを記録した選手はたった7人しかいません。ほとんどの選手が成績を落とし、中にはまったく試合に出なかった選手もいた。数字で見ると、“FAの9割は失敗”と言っていい」
最多勝投手(1998年)を経験しながら、移籍後に1勝も挙げられずに引退した川崎憲次郎(2000年にヤクルト→中日)のような選手もいるだけに、広尾氏の分析は説得力を持つ。
そんなFA戦線に、今オフは西武の浅村栄斗(28)、炭谷銀二朗(31)、オリックスの西勇輝(28)、広島の丸佳浩(29)の4人が名乗りを上げた。クリーンナップを打つキャプテンとして17度目のリーグ優勝を果たした「山賊打線」を牽引した浅村が、先陣を切って楽天への移籍を表明したが、これだけ“失敗例”が多いと、来季以降もこれまで通りの輝きを維持できるのか、不安を覚えるファンは少なくないはずだ。
1994年オフにFA宣言し、ヤクルトから巨人に移籍した広澤克実氏は、1年目は全試合に出場し、107安打、20本塁打、72打点の成績を残したが、2年目はケガの影響で38試合の出場に留まった。広澤氏が振り返る。