2020年東京五輪・パラリンピックの選手村になる中央区・晴美の臨海エリアは、五輪後に大規模マンションに改修、販売されることになっている。10月下旬、この新しい街の名称が「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」に決定。マンション価格の予想から早くも“割安”との声が広まっているが、果たして巨大住宅エリアの誕生が不動産市場にどんな影響を与えるのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がレポートする。
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考えてみれば恐ろしいことが起こり始めている──。東京都中央区の晴海エリアには2020年の東京五輪で選手村が設けられる。その跡地を開発して4145戸の分譲マンションが誕生するのだ。建物の完成は2022年の秋。入居予定は2023年の3月以降だとされている。
このマンション「HARUMI FLAG」の販売は2019年の5月に始まる予定だという。首都圏でも郊外なら3000戸規模のマンション開発はさほど珍しくはないが、東京都中央区というアドレスで4145戸というスケールで新築マンションが供給されるのは相当に珍しい。
当初は「50階建てのタワーマンション2棟」とされていたのに、ふたを開ければ18階建てが3棟。どういう理由で計画が変更になったのかはよくわからない。最近、世の中にはタワーマンション自体に対する懐疑的な見方が広がっているので、そういう風潮に忖度した可能性も考えられる。
ともあれ、限られたエリアにこれだけの新築マンションが一気に供給されるインパクトは大きい。そこで、マンション市場にはどのような影響をもたらすのか考えてみたい。
東京都心の新築マンション市場はこの5年ほど、住宅というよりも金融商品の取引市場の様相をみせていた。つまり「住む」ために新築マンションを購入するのではなく、値上がり益への期待や相続税対策としての需要が強かった。特にタワーマンションの場合は、少なからぬ割合でそういった購買行動が見られた。
現状、そういう思惑で買われた住戸が中古市場において「新築未入居」として大量に売り出されている。新築時よりも1、2割高い売り出し価格が付けられているので、動きは鈍い。ほぼ停滞しているといってもいい状態だ。
このHARUMI FLAGについては、アドレスこそ東京都中央区だが金融商品的な思惑による購買行動はほとんどないと推定される。その理由は、資産性の脆弱さだ。