今年も大物選手がFA権を行使したが、成功は簡単ではない。過去のFA移籍選手の獲得数を見ると、巨人の24人がダントツ(2位はソフトバンクの13人)。既に西武からFA宣言した炭谷銀仁朗(31)が巨人入りすることになっているが、さらに丸佳浩(29)が入団する可能性もある。彼らは、様々な“巨人のFA移籍組に特有な困難”に直面することが予想される。
かつて中日からFA宣言し、巨人に移籍した前田幸長氏は巨人移籍後の日々を「中日時代とは全く違った」と回想する。
「マスコミに追いかけられ、注目され続けますからね。僕は中継ぎで目立たないポジションのはずですが、それでもプライベートで街を歩いていて、常にどこかから視線を感じていました。気が休まるときがほとんどなかったですよ」
ヤクルトから巨人にFA移籍した広澤克己氏も同様に、「良くても悪くても人気球団にいるとスポーツ紙に取り上げられるから、どんどん余計な力が入ってしまっていた」と振り返った。
“豊富すぎる戦力”も選手の悩みのタネとなる。広澤氏が語る。
「巨人に移籍したとき、ヤクルト時代に守っていたファーストには落合(博満)さんがいたし、3年後には入れ替わるように清原(和博)が入ってきた。結果として、慣れない外野の守備をやらなきゃいけなくなったのには苦労しましたね」
今年FA宣言した丸は広島では「不動のセンター」だった。しかし、巨人には2年前にFA移籍してきたばかりの陽岱鋼(31)もいる。陽も日本ハム時代は「不動のセンター」だった。2人が同じチームとなれば、どちらかから「不動」は剥奪される。そうしたポジションの重複が、広澤氏の場合、実力を発揮する上で「壁」となった。