「発達障害」に関して、親のあり方や周囲の応じ方が各所で論じられている。そんな中、自閉症として生まれてきた少年・勇太くん(仮名)とその母を取材した単行本『発達障害に生まれて』が版を重ねている。障害児を授かった親は、周辺社会は、どのように歩を進めるのがいいのか──育児や日々の生活を綴るブログで多くのファンを持つ女優・奥山佳恵さんと同書の著者であるベテラン小児外科医・松永正訓さんが対談した。奥山さんは2011年に誕生した次男・美良生(みらい)くんが生後1か月半の時にダウン症と告げられた。
奥山:はじめまして。松永先生の最新作『発達障害に生まれて』を読ませていただいて最初に思ったのは、率直に、勇太くんがうらやましい、ということです。勇太くんってこういう人間だよってことが、本を通じて世の中に知ってもらえるから。本人がどう感じるかわからないけど、すごく有意義なことだと思います。この本は、勇太くんの“取扱説明書”だと思ったんです。
松永:なるほど。取扱説明書ですか。
奥山:はい。うちの長男(16才)は健常といわれているけど、長男の取扱説明書もあればと思うので、とてもうらやましいなぁ。健常であってもなくても、人それぞれ得意不得意があるじゃないですか。本当は、子どもの人数分、こういう書籍があってもいいのかなって思いました。
松永:勇太くんのお母さんである立石美津子さんが、ぼくの取材に応じてくれたいちばんの理由は、実はそれなんです。将来、勇太くんが独立する時がくる。就労とか、グループホーム(に住むか否か)とか、そうした時にいちばん大事なのは、人との出会いなんですよね。勇太くんのことを理解して、支えてくれる人と出会うこと。それが母親から見て、いちばん大事なことなんですね。そのために“取説”が必要なんです。
奥山:ジェットタオルの大きい音のような、ある特定の音が勇太くんは苦手だ、と書かれていますが、そうしたことを知らないと、周りの人はどう接したらいいのかわからないということがあると思うんです。
私の場合でいえば、今、次男の美良生は地域の小学校の普通学級に通っていますが、それは人とのつながりを大切にしたいからなんです。美良生には“取説”がないから、地域の子どもたちと1分1秒でも長く触れ合ってほしい。ダウン症とか、障害児という言葉を知る前に美良生本人に会うことで、本人そのままをわかってもらいたい。肌で“取説”を感じてもらって、壁が少しでもできないような環境にしたいと思っています。
松永:同級生の反応はいかがでしたか?