なぜゴルゴは一生遊ぶカネを蓄えているのに、働き続けるのか。元外務省主任分析官の佐藤優氏と、『ゴルゴ13』作者さいとう・たかを氏が、「ゴルゴ(通称G)のインテリジェンス」を読み解く短期集中連載。最終回は、人間関係を築く上でいちばん大事なことを語り合う。
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佐藤:先生とゴルゴの共通する部分でいえば、“約束”に対する態度もそうかもしれませんね。ゴルゴはお金を稼ぐために働いているわけでもない。
さいとう:とうに一生遊んで暮らせるカネは蓄えているからね(笑)。
佐藤:セックスも好きなようですが、色欲で行動を変えるわけでもない。殺すことが好きなサイコパスでもない。ではなぜ、ゴルゴがスナイパーを続けるかといえば、そのモチベーション維持には「約束を守る」ということがあるように思うんです。ゴルゴは異常と言ってもいいほど、約束を守ることに固執しますよね?
さいとう:これは、私自身が「はみ出し者」であることも影響していると思う。中学3年の時の担任に「東郷」という先生がいましてね。これまで私は、テストになんか意味がないと思い、ずっと白紙で提出していました。ところが東郷先生が白紙の答案用紙を持ってきて、私の机の上に置くと、こう言ったんです。
「白紙で出すのは君の意思だからかまわない。しかし、答案用紙を出すのは君の義務だから、その証明として名前を書きなさい」
ショックでしたね。ああ、約束事とはこういうことなんだと。それから私は人間の約束と責任を考えるようになりました。この先生の名前を借りて、ゴルゴは「デューク東郷」という名にしたんです。