この歴史から学べることは三つある。【1】アメリカは政府間交渉では必ず勝つ、【2】アメリカの要求通りになっても、アメリカの産業競争力が高まった事例はない、【3】アメリカにいじめられた国の産業はグローバル化が早まって強くなるということだ。
当時のアメリカは繊維、鉄鋼、自動車などの産業が次々に雇用を失っていたため、「ジョブ、ジョブ、ジョブ」と叫びながら日本をバッシングして様々な要求を突き付けてきた。しかし、自国内で雇用を創出する解決策は提案してこないから、結果的に日本があたふたしただけでアメリカ自身の産業競争力はつかず、雇用も戻らなかった。アメリカは「貿易慣行がフェアなら、アメリカの企業や商品は勝つ」と思い込んでいるが、それは大きな勘違いなのだ。
要するに、アメリカは交渉の時は抜群の力を発揮するが、要求が通ると興味を失い、その後に成果がなくてもフォローはしないし、怒ったこともないのである。
※SAPIO2018年11・12月号