近頃、異色な経歴を持つアイドルとして、話題となっているのが戦慄かなの(20才)だ。幼少期に両親が離婚し、母と2才年下の妹と3人で暮らし始めるも、母から虐待を受けてしまう。そんななか、10代前半から非行に走り、16才の冬には中等少年院に収容される──。そんな壮絶な過去と、更生した今のこと、そして将来について、かなのさんに語ってもらった。
◆1日3冊の読書と1日5時間の勉強
中等少年院には16才以上20才未満の者が入り、男女は完全に分離される。3人ほどの入所者を1人の法務教官が「担任」として受け持ち、入所者は矯正教育を受ける。
しかし、かなのさんは一層荒れた。課題を破いてトイレに流して詰まらせ、監視カメラにサンダルを投げつけ、レンズに向かって中指を突き立てた。
「幼稚園児を扱うような丁寧すぎる教官の態度にイラ立っていました。大人たちに保護される立場になったことで子供返りしていたんだと思います。そのせいで本当は10か月で退院できるのに2年も居座ることになって…」(かなのさん・以下同)
そんな彼女の前に現れたのは、ある女性の法務教官だった。
「私が一向に更生する気配を見せなかったからか、担任が何人も入れ替わった後、『私が面倒を見ます』と名乗りを上げてくれたベテランの先生でした」
第一印象は最悪だった。
「50代くらいなのにめちゃくちゃ色気があって、きれいな人でした。だけど、とにかく威圧的で雰囲気が怖い。『この先生には逆らえない』という空気なんです。だから私も意地になってコップを投げつけて『向き合えるもんならやってみな』と悪態をついていました」
しかし、どれだけ反抗的な態度を見せても、一対一で向き合う先生の態度に、かなのさんの気持ちは変わっていったという。
「個別面接中に言い争いになったり、反抗的な態度を取ったりすると、すぐに非常ボタンを押して他の先生たちを呼ぶ教官が多い中、その先生は絶対にひとりで私と向き合ってくれた。暴言を吐こうがイスを蹴ろうがボタンを押さなかった。一度だけ、私がコップを投げつけた時に、先生が座っていたイスを両手で持ち上げた時は“やられる!”とビビったけど、彼女はそのままイスを下ろして、座り直して普通に話を続けたんです。『教師がそんなことしていいのかよ!』って思ったけれど同時に『この人ただものじゃないな』と」
先生と対話することで、母への気持ち、自分の気持ちをゆっくり考えられるようになり、少年院での過ごし方も大きく変わった。
「社会と隔離された少年院にいることで、自分自身と向き合うことができました。だけど先生の前では素直になれず最後まで反抗的で、退院後も感謝の言葉を伝えられていません。何度か手紙を書こうかな、と思ったのですが、やっぱり照れくさくて書けない。アイドルとしてこうやってメディアに出ることで、元気にやっていることが伝わったらいいな、と思っています」
少年院での生活で、勉強の楽しさもわかったという。