2018年シーズンを2年連続日本一で終えた福岡ソフトバンクホークスは、12球団のなかでも最先端のAIデータ野球を取り入れ、活用している球団でもある。ただ、データの有用性を十分に理解した上で、ホークスが大切にしていることがある。それは、「データよりも選手の感覚を優先する」ことだ。
チーム編成部門を束ねる三笠杉彦・球団統括本部長は、「データがすべてではない。データだけで試合に勝てるわけではない」ことを強調する。
「データは試合に臨む上での必要十分条件の必要条件と言いますか……最低限、必要なものという捉え方です。もちろん他チームより収集しているデータの量や質が劣って、それが敗因になってはいけない。けれど、データを直接的な勝因にしようとは思いません。なぜなら、実際にプレーするのは選手ですから、彼らの感覚こそが優先されるべきなんです」(三笠氏)
データのスペシャリストたちは一般的に、「感覚」や試合の「流れ」、チームの「勢い」などというものを信じない。不確定要素を排除するからこそ、計測された数字が意味を持つのだ。だが、ホークスではそんなスペシャリストたちが不確定要素を軽視しない。関本塁・チーム戦略室データ分析担当ディレクターも、「今年のCSで西武ライオンズに勝てたのも、日本シリーズで広島カープを倒せたのも、チームに勢いがあったからだと思います」と振り返る。