新刊『「さみしさ」の研究』(小学館新書)でビートたけし氏が論じたのは、男の「老い」と「死」について。だが、その内容は近年流行りの「孤独礼賛本」とは一線を画す。71歳を迎えたたけし氏が語る老後の生き方とは──。
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最近は「人生100年時代」なんて言われてるらしい。年金をもらえるのは65歳どころか70歳、そのうち75歳になりそうな勢いだ。確かに、昔に比べりゃ年寄りも若々しくなっている。『サザエさん』の波平やフネは50代という設定なんだっけ? 現代で考えりゃ、あの風貌は70代どころか80代だっておかしくない。そのくらい「年寄り」という概念は変わってきてる。
そんな雰囲気のなかで、テレビを見ても雑誌を読んでも、至るところに出てくるのが「充実した老後」というキーワードだ。「年寄りも夢や目標を持て」「いつまでもアクティブであれ」みたいに色んなところでジャンジャン煽っている。
だけどオイラはそんな風潮は真に受けないよ。「きっと誰か得をするヤツがいるんだろう」とすぐに考えてしまう。
今、ニッポンのタンス預金は総額43兆円とも言われている。おそらくその大半が60代以上のリタイア世代のものだろう。つまり、老人たちが家の中でボーッとしてたんじゃ経済はドンドン回らなくなっていく。カネを吐き出させたい人たちからしてみりゃ、「老人は活動的であれ」って風潮が世間に浸透したほうがありがたい。
政府だって、年金がパンクしそうな状況じゃ、老人にジャンジャン働いてもらって、支給を遅らせるほうが好都合だ。
「いつまでも若くあれ」って風潮の正体なんてそんなもんだ。だからホイホイ世間の口車に乗らないほうがいいと思うぜ。