グラビア写真界の第一人者、渡辺達生氏(69)が“人生最期の写真を笑顔で撮ろう”とのコンセプトで立ち上げた『寿影』プロジェクト。渡辺氏は、自然な笑顔を引き出すべく、撮影する人に「一品」を持ってきてもらって、それにまつわるエピソードを聞きながら撮影する。
キャメラマンの木村大作氏(79)が持ってきたのは、オリジナルのパン棒と、初監督差品『剱岳 点の記』の台本。
真一文字に突き進んだ映画人生60年。日本映画界屈指の名キャメラマンが肩に掛けているのは、キャメラを左右に動かす際に使うパン棒。キャメラと一体になり、感情で撮影するために考案したその名も“ひねくれパン棒”で、木村氏は幾多の名作を世に送り出してきたのだ。
67歳にして覚悟を決めて監督をやることにした『劔岳 点の記』は240万人を動員し大ヒット。
「この1本で人生が変わった。キャメラマンと監督の二刀流は、自分を映画そのものにした。この頃から人生の終末は意識しているが、僕にとってただ生きるのは死と同じ。だから、映画への夢は生涯持ち続けたいと思うね」