臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になった著名人やトピックスをピックアップ。記者会見などでの表情や仕草から、その人物の深層心理を推察する「今週の顔」。今回は、不祥事の責任を取り引退を決意した大相撲の幕内・貴ノ岩を分析。
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またも相撲界を揺るがす衝撃的なニュースが流れた。暴行事件の被害者だった幕内・貴ノ岩が一転、加害者になったのだ。それだけに留まらず、事件の責任を取り引退も決意したという。
暴行の理由は、同じ千賀ノ浦部屋の弟弟子である付け人、三段目・貴大将が忘れ物の言い訳をしたという、なんともつまらないもの。かっとなった貴ノ岩は、冬巡業先のホテルの部屋で付け人の顔を平手や拳で殴ってしまった。
なぜ我慢できなかったのか。どの情報番組もこの話題を取り上げ、コメンテーター達は、貴ノ岩がかっとなった裏にはこの1年の彼の状況や、同じ部屋の貴景勝関の優勝などからくるストレスや割り切れない感情が隠れていたのでは、とそれぞれの見解を述べた。暴力を振るわれた人は暴力を振るう「暴力の連鎖」を強調するコメンテーターもいた。
だが、どのコメンテーターも歯切れが悪い。過去自分がやられて悔しかったはずなのに、加害者だった元横綱・日馬富士に民事訴訟まで起こしたのに、“なぜ”という疑問符がついたからだ。「理解できない」「裏切られた」というコメントが多く聞かれた。
日本相撲協会はこの1年、暴力根絶に取り組んできた。外部有識者による暴力問題再発防止検討委員会を設置して、大規模なアンケートや聞き取りを行い、暴力について調査してきた。その結果、暴力が起こりやすい場所や状況など実態が明らかになり、八角理事長は10月25日、研修会の開催やコンプライアンス委員会の設置などを掲げ、暴力決別宣言を公表した。そこには「いかなる目的の、いかなる暴力も許さない」とある。