2020年1月もって廃止される大学入試センター試験の代わりに、2012年から新たに導入される『大学入学共通テスト』。知識や技能だけでなく、思考力や判断力、表現力が重視された試験になるという。センター試験のマークシートでは、正解は1つだけだったが、新テストは複数の選択肢が正答となったり、「解答なし」という選択肢が導入されたりするという。また、記述式の問題も登場する。
こういった一大改革の予兆を察知し、“先手”を打とうとする受験生も現れている。精神科医の水島広子さんの長男(17才)もその1人だ。水島さんの長男は昨年、周囲の反対を押し切り、大学までエスカレーター式で進学できる私立高校に入学した。
「周囲は、まず普通の高校に入り、国立大学を受けることを勧めましたが、本人は『仮に一浪したら、大学入試の新テストに対応できるか不安だから』と見越してエスカレーター式に大学に進める高校に決めました。私は新テストのことに気づいていなかったけれど、長男世代は将来を左右する大問題としてとらえていたのです。私の世代の受験勉強は参考書や過去問の分析で何とかなりましたが、今はそのやり方が通用しない。つくづく、『今の受験は大変だ』と感じます」
先手を打とうとするのは受験生だけではない。高校以下の教育界もまた、変革の時を迎えている。
その象徴的な事例となったのが「開成ショック」だ。私立中学の入試が一斉に幕を開けた今年2月1日、その最高峰である開成中学校(東京・荒川区)が「国語」として出題した問題は、以下のようなものだった。
《社長は、部長の報告のどの表現に、客観性に欠けたものを感じたのでしょうか。二つ探し出し、なるべく短い字数で書きぬきなさい》
まるで、会社員同士のディスカッション、はたまた就職試験のような内容だが、これこそが小学6年生の受験生たちが格闘した問題なのだ。従来の“詰め込み型知識”では歯が立たないことがわかるだろう。
中学受験における男子トップ校である開成中学が従来の知識や技能を問うのではなく、大人でも答えられないような思考力を問う、全く新しいタイプの問題の出題に踏み切ったことは、受験生とその親はもちろん、教育関係者にも大きな衝撃を与えた。それが「開成ショック」である。
この問題は、大学入試改革を先取りしたものだといわれている。大学入試が変われば、それに合わせて高校や中学の入試も変化するのだ。
『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』(新潮新書)の著者で、教育評論家のおおたとしまささんが指摘する。